「修業の時計」を止めない教師に の商品レビュー
私は教師になって間もなく(実際は、学生時代に)有田和正先生のことを知ることができたので、「『修業の時計』を止めない教師」で有り続けることができている。本書は、有田先生が十年経験者研修を見て、驚かれたところから始まる。そこで「修業の時計が止まっている」多くの教師の存在を知り、「こ...
私は教師になって間もなく(実際は、学生時代に)有田和正先生のことを知ることができたので、「『修業の時計』を止めない教師」で有り続けることができている。本書は、有田先生が十年経験者研修を見て、驚かれたところから始まる。そこで「修業の時計が止まっている」多くの教師の存在を知り、「これでは子どもたちのためにならない」という危機感と「こうすれば、修業の時計を動かすことができる」というものを提示すべきだと考えられたのであろう。授業や教材研究の全般について大切にすべきことがていねいに書かれている。 ① 教材研究の20分の1、30分の1を教えるようになったとき、子どもたちは「授業がおもしろくて仕方がない」と思うようになった 教材研究の深さを分かりやすく書いている文である。有田先生は教材研究の深さを「専門性」とも表現している。今の教師は「専門性」が不足している。プロ教師として最低限、自分の専門教科に強くなら(自信をもて)なければならない。そのためには、楽しみながら徹底的に「はてな?」を掘り深めていくことである。「対応の技術」や「学習技能」は、まずは教師自身の教材研究(教材理解)、学び方が基礎となるのである。 教材研究においても「まずは教師から」なのである。これがあっての授業である。深い教材研究のない授業など、授業と呼べないのだろう。 ② 「ねらい」が具体的で、教材のポイントがはっきり示されているか 「深い教材研究ができている=本時のねらいが鮮明であり、具体的に何を、どのように指導して、どんな力を付けるのかがわかる指導案になっている」「具体的で鮮明なねらいをもつ」……子どもを授業で育てるためには不可欠である。45分であれもこれも鍛えることはできない(力となっていかない)。「具体的で鮮明なねらい」をもつことができるまで教材研究をするのである。指導案を読む・書くときにも大切な視点である。 ③ 話し合うことは「新しい意味と価値を発見すること」につながらなければ意味がない 本書では「5つの対応の技術+人間性」「必要な18の学習技能」についても有田先生の主張が詳しく書かれている。上記の言葉は「対応の技術」のひとつ、「話し合い」についてである。教師が「話し合う意味のある学習場面・内容があるか」の見極めが必要であるし、「話し合う」ことの切実感を子どもたちにもたせた上で進めなければ、学習技能として身についていかない。どこでも「話し合い活動」がおこなわれているからこそ、「その話し合いは意味のある活動か否か」を見定める、指導者の眼や感性が問われてくる。 有田先生は、「おもしろくない授業をしているのは『教師に力量がない』ということである」そして「これにつきる」と断言している。教師の力量向上こそが子どもたちを幸せにする……教師修業の大切さ、そしてその尊さを改めて強く考えさせられた。
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