失われた探険家 の商品レビュー
狂気が描かれる。特別なこととしてではなく、全ての人間が狂人であるといった前提。ジャンルはニューゴシックだと。読み始めは、もう亡くなっている人の復刻かと思ったが案外最近の作品。父上が最凶の精神病院の院長に若くして勤務した人物らしいが、成長発展時に存分に影響を受けていそう。本人は明ら...
狂気が描かれる。特別なこととしてではなく、全ての人間が狂人であるといった前提。ジャンルはニューゴシックだと。読み始めは、もう亡くなっている人の復刻かと思ったが案外最近の作品。父上が最凶の精神病院の院長に若くして勤務した人物らしいが、成長発展時に存分に影響を受けていそう。本人は明らかに健やかで、読み物の中であるからこそ自由に表現している。どれも面白いし好きだが「悪臭」「もうひとりの精神科医」など後半の「信頼できない語り手」からの抜粋がより好み。ぜひ他の作品も読んでみたい。
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現代のサキとも、ポオとも称せられる異色作家、パトリック・マグラア。その短編集『失われた探険家』は、以前刊行された『血のささやき、水のつぶやき』(河出書房新社)収録の十三編に新たに六編を加えた全短編集だ。 マグラアの作品では精神疾患者や偏執狂など、物事への客観性を著しく欠いた人間が物語の語り手であることが多い。彼らは所謂「信頼できない語り手」であり、読み手は彼らが語る物語を鵜呑みにするも良し、深読みして事実を推測するも良し、幾通りもの読み方ができるのが魅力だ。 本書所収の短編にも「信頼できない語り手」は登場する。刑務官志望の学生がストーカー行為に走る『監視』、娘を守るべく吸血鬼に立ち向かう母親の話『吸血鬼クリーヴ あるいはゴシック風味の田園曲』、高圧的な家長がある日突然漂い始めた悪臭とその源を追究する『悪臭』、精神科医二人の確執を描いた『もう一人の精神科医』における語り手たちである。このタイプの作品はラストに最大の読ませ所があり、どんでん返しの面白さを味わえる。 表題作の『失われた探険家』は、自宅の庭に現れた瀕死の探険家を看取る少女の物語。日常生活に不意に異質なものが現れ、日常に吸収されていく顛末が飄々と語られる。『天使』や『酔いどれの夢』、『血の病』などの作品もその点では同系列と言える。 頭に手の生える奇病の話『黒い手の呪い』、オナニー中毒者の手が生命を持って悪さを働く『オナニストの手』、両性具有者の肉体のエロスと凄惨な殺人場面が印象的な『血と水』では、異様な人体描写にマグラアのこだわりの文体が冴える。連続殺人鬼にインタビューする女性記者の話『アーノルド・クロンベックの話』は隙のない面白さ。 他にも、性欲を抑圧し過ぎた神父の転落を描く『アンブローズ・サイム』、ミニチュアの精神科医たちに苛まれる幻覚が生々しい『串の一突き』、肩透かしのラストが逆に秀逸な『マーミリオン』、長靴が語る『長靴の物語』、蠅が語る『蠱惑の聖餐』。ほかにも『オマリーとシュウォーツ』、『ミセス・ヴォーン』など、偏愛と憎悪が優雅にブレンドされ、ブラックユーモアと猟奇趣味の味つけの効いた作品群が並ぶ。 いずれの行間にも、人の心の深淵を安易に分析しようとする者たちへの著者の嘲笑が潜んでいるように思える。
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不条理で残酷だが、なぜか目が離せなくなる展開のストーリーばかり。 死刑囚を取材するジャーナリストの話がよかった。
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おもしろいけど、気持ち悪いよ! 「アーノルド・クロンベックの話」「血の病」「長靴の物語」が良かった。そう来るとは! とまさかの展開。「血の病」は場面場面のドラマチックさも良い。B級ホラー映画にしたい。「吸血鬼クリーヴ」「もう一人の精神科医」もイラーっと来る気持ち悪さが面白かった。
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「信頼できない語り手」の一人称による作品6篇。やられた〜〜全19編のうち、13編は「血のささやき、水のつぶやき」に収録されていたので、6編だけが初読。しかし、この「信頼できない語り手」という表現が、結構いい。言っていることの、どこまでが真実なのかわからずに物語がすすんでいく・・・...
「信頼できない語り手」の一人称による作品6篇。やられた〜〜全19編のうち、13編は「血のささやき、水のつぶやき」に収録されていたので、6編だけが初読。しかし、この「信頼できない語り手」という表現が、結構いい。言っていることの、どこまでが真実なのかわからずに物語がすすんでいく・・・いい感じ。くどくど長くないところがまたよい。でも、ま、偏った一人称の話なので、なかなかわかりにくくもある。手にして初めてわかった。装画は松尾たいこ氏。この「奇想コレクション」シリーズ全てかも。他の作品群が、また楽しみだな♪
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話の内容よりも父と叔母がともに犯罪心理学など心理学の権威であり、そのことにまつわるエピソードのほうが私としては面白かった。 内容としては原作など背景を知らないと楽しめないものが多かったので読みにくかった。
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ストーリーも雰囲気も訳もすごく好みで、読んでて気持ちよかった(笑)!表題作の「失われた〜」は、探検家の存在が唐突なんだけど物語として違和感がなく、ラストはキュンとせつなくなりました。短編のなかでどれが一番好みか、というのは非常に難しい。表題作をはじめ、『血の病』、『串の一突き』、...
ストーリーも雰囲気も訳もすごく好みで、読んでて気持ちよかった(笑)!表題作の「失われた〜」は、探検家の存在が唐突なんだけど物語として違和感がなく、ラストはキュンとせつなくなりました。短編のなかでどれが一番好みか、というのは非常に難しい。表題作をはじめ、『血の病』、『串の一突き』、『マーミリオン』、『天使』等々、奇妙で陰鬱で皮肉で美しくて匂いに満ちた印象的な話が詰まってます。
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12歳の少女が庭で見つけた、行方不明の探検家――現代のポーと激賞される 異色作家が綴る、グロテスクで官能的な世界。SF寓話からゴシックホラーまで 全19篇。待望の全短編集。
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