失われた時を求めて(13) の商品レビュー
この小説が必ずしも第1巻の「スワン家の方へ」から順を追って書かれたとは限らないのだが、長大なこの作品の、しかも最終巻も終り近くになって、我々は作家が、まさに「今」書き始めようと決意する場にさしかかる。いずれにしても、この小説が書き始められたのは、多くの事柄が終って、「時」を経てか...
この小説が必ずしも第1巻の「スワン家の方へ」から順を追って書かれたとは限らないのだが、長大なこの作品の、しかも最終巻も終り近くになって、我々は作家が、まさに「今」書き始めようと決意する場にさしかかる。いずれにしても、この小説が書き始められたのは、多くの事柄が終って、「時」を経てからである。そうすれば、我々は、作家としての出発の「時」と、物語の終焉の「時」とにここで同時に立ち会うことになる。すなわち、この時初めて我々は、自分自身がこの小説の円環構造の渦のただ中にいたことをあらためて知ることになる。
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失われた時を求めて13 マドレーヌを紅茶に浸してから語り手の記憶から物語が始まり、最後に記憶の中の鈴の音で始まりと繋がった。ふたつの道は交わり溶け合い浮いて沈んでひとつになった。最後に見出した時。文学、絵画、音楽、恋愛、戦争、階級、人間心理などの考察は一度では汲み尽くせない。「神...
失われた時を求めて13 マドレーヌを紅茶に浸してから語り手の記憶から物語が始まり、最後に記憶の中の鈴の音で始まりと繋がった。ふたつの道は交わり溶け合い浮いて沈んでひとつになった。最後に見出した時。文学、絵画、音楽、恋愛、戦争、階級、人間心理などの考察は一度では汲み尽くせない。「神曲」がゴシックの大聖堂ならこの作品はバロックやロココ式の回廊で繋がった宮殿のようだ。この本こそ再読以降が本当に面白いのかもしれない。 1巻を読み始めたのはいつだったか…1年か2年前…。 センテンスが長く、余白も少ないのに500ページ近くあるので馴れるまで読みづらかった。逆にどこでやめてもまたすぐに読み始められることに気づいてからは通勤電車で読むのに最適だった。重さを除けば。ヴアントイユの七重奏曲は語り手に「赤い神秘的な呼びかけ」をしたが、そのあまりにも見事な描写のおかげで今まで避けてきたクラシックを聞いてみようという気になりクラシックの虜になってしまった。そういう意味でも特別な本。
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凡例 はじめに 見出された時(続) 訳注 主な情景の索引 本巻の主な登場人物 エッセイ 戦争とプルースト 加藤周一 あとがき 引用された文学・芸術主要作品索引 巻末 登場人物作品 巻末 (目次より)
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