吾輩のご主人 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
学生時代に感銘を受けた方…。 恥ずかしながらお名前すら存じ上げない方…。 また通りいっぺんに読んだ書も…。 それがこうした視点で読んでみると、 なんて興味深く、楽しいのだろうと思います。 ”猫”という存在に、自分と同じように愛情を注がれた方々…。 遠い遠い偉大なる方々が、ほんの少し身近に感じられた一冊でした。 以下覚書きです。 南方熊楠氏(植物学者) 昭和天皇に粘菌学をご進講の際、キャラメルのボール箱を手に。 没後、昭和天皇は「雨にけぶる神島を見て紀伊の国の生みし南方熊楠を思ふ」 無位無冠の在野の学者をフルネームで詠まれた。 夏目漱石氏・正岡子規氏同窓「ネイチャー」に論文掲載。 ハーバード・スペンサー、チャールズ・ダーウィンと並び世界の碩学と称される。 着物を売って本を買い、いつも裸で暮らしながらも猫だけは手放さず、 一人前の食事を分け合い布団代わりに抱いて寝た。 歴代猫の名前はすべてチョボ六。ワンちゃんはすべてポチ。 そして、お手伝いさんは誰でもおうめどん。 大吹雪の中、ついてきた仔猫を亡くなった妹の生まれ変わりであったらと、必死で助けた。 稲垣足穂氏(作家) 「日本文学史上天才と呼ばれる作家は、後にも先にもタルホをおいて他に無い」三島由紀夫氏賛辞。 銭湯の帰りには生節が猫へのお土産。 書き物の上に座られると退くまで待つ。 座布団を取られるのは日常で、おかずの初めの一箸は猫へ。 岡倉天心氏 ボストン在住時飼っていた猫・コーチャンへの手紙。 「親愛なるコーチャン、ずいぶん久しぶりだね。」で始まる。日本のマタタビを添えて送る。 茂田井武氏(画家) 宮沢賢治セロひきのゴーシュ挿絵を病床で描く。 チョンちゃん日記。 徹夜して疲れて寝てても足にかみつき寝かせてくれない。 絵の具の水を飲んで、お腹痛くなってもしらねーぞ! 熊谷守一氏(画家) 文化勲章を辞退。 私は生きることが好きだから他の生き物も皆好き。 生き物は人間と違ってウソを言わないからかわいい。 猫の身になり、猫が困らないような暮らしやすい環境にしていた。 雨戸の隅に猫口。障子の桟の紙をめくり出入り自由に。 春日部たすく氏(画家) 猫を飼いだした理由は何の変哲もない。 知人の家で生まれた仔猫のあまりのかわいらしさに手を出したに過ぎない。 絵描きの心象世界に飼っているものは、 それが花でも樹木でも、山でも人間でもいい。 心の中に飼ってひそかに語り合う何かであればいい。 私の場合はそれが猫であったというだけのこと。 津高和一氏(画家) 阪神大震災でご夫婦共々お亡くなりに。 開けたままにしておいた玄関の閉まらずの穴のおかげで猫は助かる。 「十匹ニャンちゃん大脱出」と神戸新聞の記事に。 被災するのは人間だけではない。 ”悲喜こもごもが交差する哀歓の渦中で猫は黙々と不介入ではあったが、点景となっていた。” アブラハム・リンカーン 官邸で4匹の猫を飼い、奴隷解放宣言に署名したその同じ手が野良猫たちを撫でる。 「君たちは猫でよかったね。今起こっている恐ろしい戦争のことなんか何もわからないんだろう。」 シュヴァイツァー博士 迷い込んできた蜂を見つけ、コップで蓋をして紙を差し込み外に放す慈悲の放上の心。 病院はノアの箱舟のごとき巡回動物園。 左腕に抱かれたまま猫のシチが眠るとその安眠を妨げまいと右手だけで書き物をした。
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