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ガリレオ・ガリレイの『二つの新科学対話』 の商品レビュー

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2014/12/18

17世紀である1638年に出版されたガリレオ・ガリレイ(1564〜1642)の論文「静力学および動力学に関する二つの新科学についての討論および数学的証明」二日目の静力学の部分を、訳者である東大名誉教授をして「読者が材料力学、構造力学に通じた人であることを前提として、現行述語を用い...

17世紀である1638年に出版されたガリレオ・ガリレイ(1564〜1642)の論文「静力学および動力学に関する二つの新科学についての討論および数学的証明」二日目の静力学の部分を、訳者である東大名誉教授をして「読者が材料力学、構造力学に通じた人であることを前提として、現行述語を用いて一種の意訳をした」訳書です。 まずは、17世紀のガリレイの論文が現代的日本語(専門用語)で難なく読み進められることに感謝します。ところが、材料力学、構造力学に通じた人である私は、ガリレイの展開する梁の強度理論に違和感を感じながら読み進めることになりました。そう、訳者があとがきに記しているように、梁の中立軸が常に梁の下端に置かれているからです。訳書によると、ガリレイが本論文を書いた時点ではフックの法則(現代人は中学生でも知っている!)が公表されていなかったため、とのことです。 ガリレイの論文は、Sagredoサグレド、Salviattiサルヴィアチ、Simplicioシンプリチオの三人の対話の形式をとっています。なお、訳者によるまえがきでは、シンプリチオはアリストテレス学派の代表者であり、シンプリチオを馬鹿でノロマであるがごとく言っていて、有罪を宣告されたとのことです。三人の議論は、アリストテレスが「力学」で発表し、アルキメデスが厳密に証明した「梃子の各端に作用する外力と抵抗力(反力)の大きさはそれぞれの支点からの距離に反比例するという議論が証明済みとの仮定から、その議論を他の方法で証明することからスタートします。その証明後、本来の課題である破壊荷重と棒の長さや厚さの関係を順次求めていきます。 命題1 矩形片持ち梁の破壊荷重は、梁の長さl/厚さdが大きくなるほど減少する。引張り強度(論文中では絶対破壊抵抗力と呼ぶ)が梁断面内に均等に分布するとして、固定端下端を支点とした梃子にモデル化して力の釣り合いを立てて証明した。 命題2 幅bが厚さdより大きい矩形断面の片持ち梁の先端に荷重したとき板幅方向に荷重した方が板厚方向に荷重するより破壊抵抗力は大きいが、その比率はどのようになるか。命題1と同様にモデル化し、比率がd/bになることを示した。(注:正しくは3乗の比) 命題3 片持ち梁の長さが長くなると、梁自重によるモーメントが破壊抵抗力に比して2乗の比で増大する。 命題4 命題8 自重では破壊しない最長の円棒または角棒が与えられたとして、より長い円棒の場合、それが自重に耐えうる唯一かつ最長の棒としての径を見出せ。→この命題から、小動物の骨の長さが3倍になったとき、この長さを持つ動物が小動物と同等の運動機能を発揮するのに必要な骨の太さを描くと、拡大した骨がいかに不釣合いな形をしているか示している。 あとがきには、マリオネット(1620〜1684)、フック(1635〜1703)、ライプニッツ(1646〜1710)ベルヌーイ兄弟(ヤコブ1654〜1705、ヨハン1667〜1748)、クーロン(1736〜1806)、ナビエ(1785〜1836)がガリレイに続き、私たちが大学で学んでいる弾性理論体系が完成することが示されていて、これらの技術史にもさらなる関心が湧きます。 ガリレイの論文は、現代の建築や土木の技術の礎であり、現代技術者必携ではないでしょうか。とても興奮しながら読める一冊です。

Posted byブクログ