ナナ の商品レビュー
再読。たぶん人生で3回目に読んだ。 『居酒屋』から3年後の1880年に書かれた作品だが、どうも『居酒屋』とはちょっと書き方が違うような気がする。『居酒屋』はバルザックばりの、怒濤のような物質的なディティールの書き込みが圧巻だったが、『ナナ』の方は人物が多く物語の進展もスピーディー...
再読。たぶん人生で3回目に読んだ。 『居酒屋』から3年後の1880年に書かれた作品だが、どうも『居酒屋』とはちょっと書き方が違うような気がする。『居酒屋』はバルザックばりの、怒濤のような物質的なディティールの書き込みが圧巻だったが、『ナナ』の方は人物が多く物語の進展もスピーディーなこともあり、より読みやすくなっている。 冒頭の、劇場でオペラ?にナナが登場し、演技も歌も下手なのに、ただ性的魅力だけで客を圧倒し、フェロモンを爆発的にパリ市民に降り注ぐ場面が素晴らしい。ただし、この最初の場面で若者2人が、劇場に来ている様々な人物を名指し寸評したりするところは、固有名詞が一気に大量に並列されるのが辟易させられるが、ここで出てくる人物たちは重要なので、初めて読む人は簡単なメモでもいいから、登場人物表を作っておいた方がいいかもしれない。 『居酒屋』は徹底してパリ下層社会を描写していたが、ジェルヴェーズの娘ナナをえがく本作には新聞記者、役者から伯爵、侯爵といった貴族連中まで出てくる。 ナナは「高級娼婦」ということだが、要するに美貌を利用して社交界に出入りする紳士たちを籠絡する。それでうまいこと金を手に入れるのだが、必ずしも金目当てというわけでもなく、貧しい時期もある。 ナナはあくどい女としては書かれていない。単に気まぐれで浮気っぽいだけで、むしろ純情なところもあり、この小説全体が、彼女の魅力的な造型によって成功している。 彼女の一族が苦汁を飲まされた「社会」に対し、ナナは社会を性的手法で攪乱し、破壊することをとおして「復讐」しているのだ、という考えが、作者自身によって漏らされている。 ただこの「復讐」は、現象としてそういう結果になっているだけであり、ナナ自身は素朴な気ままさで生きているだけだ。 最後に天然痘により、自慢の顔をただれさせて死ぬナナの描写は、かなりグロテスクで気味が悪い。 この「腐敗」は社会を震撼させる「性」そのものをかたっているのだろう。 印象深く、かつ読んでいておもしろい傑作。
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読み始める前は、「男を次々と手玉にとって破滅させる悪女!」みたいな物語かと思っていたのですが、ちょっと違ったみたいです。 ナナ、頭からっぽすぎる…! 堕ちるところまで堕ちていって、これ以上どうなるっていうの?という状況になってからが小説家ゾラの真骨頂。
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まるで濃縮還元のオレンジジュースを飲んだような感じ。むせかえるような香水と化粧の匂いと目が眩むばかりの黄金と宝石の輝きと金貨の流れ落ちる音。 貴族や地主や銀行家を骨までしゃぶり破滅させるヴィーナス。麻薬のように脳をとろけさせ骨の髓を蝕む淫婦ナナ。ジェットコースターのように登って堕...
まるで濃縮還元のオレンジジュースを飲んだような感じ。むせかえるような香水と化粧の匂いと目が眩むばかりの黄金と宝石の輝きと金貨の流れ落ちる音。 貴族や地主や銀行家を骨までしゃぶり破滅させるヴィーナス。麻薬のように脳をとろけさせ骨の髓を蝕む淫婦ナナ。ジェットコースターのように登って堕ちて登りつめて墜落した。その最後はあまりにもおぞましかった。
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エミール・ゾラのライフワーク「ルーゴン=マカール叢書」の中でも、代表作とされる一冊。第二帝政期、普仏戦争前夜のパリにおける高級娼婦とそれに群がり、破滅していく男達の様相を描く。 とにかく圧倒的な人数の登場人物と延々と続く長いストーリーに圧倒される。同じテーマを現代的に描けば、登...
エミール・ゾラのライフワーク「ルーゴン=マカール叢書」の中でも、代表作とされる一冊。第二帝政期、普仏戦争前夜のパリにおける高級娼婦とそれに群がり、破滅していく男達の様相を描く。 とにかく圧倒的な人数の登場人物と延々と続く長いストーリーに圧倒される。同じテーマを現代的に描けば、登場人物のキャラクタ造詣は描き分けられて、もっと読み易いエンターテイメント小説になるのだろうが、そこが淡々と描写されているだけに単調で退屈な感はいなめない。まぁ、それを文学の世界では自然主義と呼ぶのかもしれないけれど。
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女の肉があたかも全能であるかのように男を翻弄する、と云うだけの話。 ナナを、ひとつの統一ある人格を備えた実体として想像することが全くできなかった。ナナ同様に、物語にも、筋らしい筋はなく、ブツ切れのつぎはぎだ。 所謂「社交界」とその周辺に寄生する連中による、実にどうでもいい...
女の肉があたかも全能であるかのように男を翻弄する、と云うだけの話。 ナナを、ひとつの統一ある人格を備えた実体として想像することが全くできなかった。ナナ同様に、物語にも、筋らしい筋はなく、ブツ切れのつぎはぎだ。 所謂「社交界」とその周辺に寄生する連中による、実にどうでもいい事件なりお喋りなりが延々と続く。しかも連中にとってはそれがさも重大事であるかのように語られており、退屈この上ない。「社交界」と云うところは、下世話な肉欲・物欲とそれに付随する醜聞以外、まるで内実が無い。 自然主義文学の退屈さをみごとに体現している。 "ナナにはちゃんと別の物がありまさあ。ほかのすべての物に代る物があるんだよ。" "建物の上から下まで、人々は、みんな愛欲にのたうち回っているという。だから、パリの夜の九時から朝の三時までの時間は、目も当てられないに決まってる。・・・もし私たちがパリ中の部屋の中を見ることが出来るんだったら、ずいぶん奇妙奇天烈な場面にお目にかかれることになるわよ、下々の人たちは下々の人たちで淫欲に耽っているし、上流の者はそれに輪をかけた嫌らしいことをしている、・・・。"
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『居酒屋』でナナが、母親と浮気相手のセックスを盗み見るシーンがあるが、あれはこの作品への伏線だったのかと思い、なるほど合点。 序盤で登場人物が一気に出てくるので、それをしっかり把握しておかないと、途中で誰が誰だかわからなくなる。実際、前半をある程度読んで、何日か経ってから続きを読...
『居酒屋』でナナが、母親と浮気相手のセックスを盗み見るシーンがあるが、あれはこの作品への伏線だったのかと思い、なるほど合点。 序盤で登場人物が一気に出てくるので、それをしっかり把握しておかないと、途中で誰が誰だかわからなくなる。実際、前半をある程度読んで、何日か経ってから続きを読んだら意味不明で、最初から読み直す破目に陥った。 たしか当時の新聞に一章ずつ掲載された作品だと聞いた憶えがある。そのせいか、文庫で一気に読み通すにあたっては、物語の構成にいささかのぎこちなさを感じた。 破滅を招くとわかっていても(わかっていなくても)、人間が甘い蜜に食らいつくのは、古今東西変わらないんだなあと思った。
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まだぜんぜん読めていないゾラの名作。『居酒屋』とは違った作品になっていることを期待。現代のNANAとは似ても似つかぬロシア女性の物語?
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