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超鉄鋼 の商品レビュー

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2009/10/07

 物質・材料研究機構(NIMS)は、旧科学技術庁の元にあった金属材料技術研究所と無機材質研究所が平成13年に合併して独立行政法人化した研究機関。本書は旧制度時代から長年にわたって研究してきた表題の成果をまとめたもので、従来の常識を破る特性を備えた鉄鋼材料を創出するために様々なアプ...

 物質・材料研究機構(NIMS)は、旧科学技術庁の元にあった金属材料技術研究所と無機材質研究所が平成13年に合併して独立行政法人化した研究機関。本書は旧制度時代から長年にわたって研究してきた表題の成果をまとめたもので、従来の常識を破る特性を備えた鉄鋼材料を創出するために様々なアプローチを試みた様子が伺える。  国営だった機関が次々と独立行政法人化しているが、長い間お役所勤めだった人々が独立採算を成立させるのは至難の業と思えるし、まして研究者という人種はなおさらだ。苦労している機関が多いだろう。  その中でNIMSはかなり積極的に「研究成果の実用化・産業化」を志している。例えば定期的に企業の技術者を招いて、研究成果を発表して懇親を深める“イブニングセミナー”を開催しており、私も川崎にいた頃一度だけ参加させてもらった。その時に発表された内容の中には、本書にも紹介されている「大気腐食モニター型腐食センサー(ACMセンサー)」や「超音波疲労試験機」があった。  企業人から見るとまだまだ“学者肌”を感じることもあるし、本書で紹介されている技術も本当に産業化するにはいくつものハードルを越える必要を感じる。しかし決して机上の空論ではなく、将来的にはNIMS発の技術が産業を変えていくこともありうるだろう。と、期待したい。  本書でもっとも興味深かったのは、マルテンサイト組織の強化機構に関する研究だ。マルテンサイトは鉄鋼材料の熱処理を考える上で最も基本的な事項だが、ここで導入された新しい評価法を適用することでさらに知見が深められそうに思われる。これもまた、将来の進展に期待したい。

Posted byブクログ