信頼 の商品レビュー
不思議な本だった。 フィールド・フィロソファーとでも呼称すればよろしいのだろうか。 徹底的なフィールドワークから紡ぎだされた思索のアンソロジー。
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旅する哲学者、アメリカでは名誉教授の肩書きを持つ、アルフォンソ・リンギス。 彼の旅のスタイルは、人類学者のフィールドワークのそれに限りなく近い。 地球上の厳しい場所、辺境、歴史が深い痕跡を残す場所、人智を超えた自然へと、 彼は赴き、ひたすら歩く、風景をみつめる。 砂埃や人の汗の...
旅する哲学者、アメリカでは名誉教授の肩書きを持つ、アルフォンソ・リンギス。 彼の旅のスタイルは、人類学者のフィールドワークのそれに限りなく近い。 地球上の厳しい場所、辺境、歴史が深い痕跡を残す場所、人智を超えた自然へと、 彼は赴き、ひたすら歩く、風景をみつめる。 砂埃や人の汗のにおい、見知らぬ土地に流れる、風と言語、欲望・・・ 目に映る情景のみならず、沸き起こる情動もあらわにしながら、彼は進む。 豊かな知識とともに、旅での深い経験に根ざした智恵を、 かつての哲学者たちの言葉を引きながら、彼はわれわれに語りかける。 「きみ」という言葉と、強いイメージをたたえた写真とを効果的に用いて、 読みすすめるわれわれを、いつのまにか文中に引きずり込む。 そしていっしょくたに、作品に塗り込めてしまう。 その恍惚。 これは、この世界に捧げる、彼の壮大な詩篇だ。 「信頼という行為は、未知なるものに飛び込むことだ」 まったく新しい、思索と冒険とヴィジョンとが待ち受ける、知の祝宴へ旅立とう。
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トラベローグである。 哲学者、学者はアメリカから辺境に飛ぶ。 まなざしを彼らに向ける。そして感じて考える。物語をこしらえる。 この人の書いたものがなぜ好きなんだろう。 かっこいい。こうありたいと願う正義がある。 それは一見確固たる正義のようであるが、とても弱々しい正義だ。 人...
トラベローグである。 哲学者、学者はアメリカから辺境に飛ぶ。 まなざしを彼らに向ける。そして感じて考える。物語をこしらえる。 この人の書いたものがなぜ好きなんだろう。 かっこいい。こうありたいと願う正義がある。 それは一見確固たる正義のようであるが、とても弱々しい正義だ。 人々は弱さを人々の中にみる。しかし、それは強さのある部分。 サンパウロという3ページくらいの、彼のまなざしと彼女の弱さと強さを 読む。ぼくは、読書をして彼の追体験をする。そして彼女を自分とも重ねる。言葉がなくなる。 信頼を読む。身をまかせること、あなたにぼくを預けること。信じることで強さが増す。 作品ひとひとつが秀作。写真も力強い。 一番好きな旅行思想集。
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