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誘惑マンション の商品レビュー

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マンションに居座る美女達と真摯に向き合う主人公が良い

フランス書院文庫としては異色の作品ではなかろうか。最近の誘惑系に顕著な相姦要素がゼロである。デビュー作とあるが、文章の組み立てや筆致に拙さは微塵も感じられず、どなたか技量のある作家先生が別のペンネームで執筆したかのようでもある。メインのストーリーは、街づくり再開発のためにマンショ...

フランス書院文庫としては異色の作品ではなかろうか。最近の誘惑系に顕著な相姦要素がゼロである。デビュー作とあるが、文章の組み立てや筆致に拙さは微塵も感じられず、どなたか技量のある作家先生が別のペンネームで執筆したかのようでもある。メインのストーリーは、街づくり再開発のためにマンションを取り壊したい会社の若手社員とそれを拒んで居座るヒロイン達とのやり取りなのだが、金に物を言わせて立ち退かせようとする前任者を皮肉に扱って真摯な態度で臨む主人公と対比させながら、ヒロイン達が拒む本当の理由をドラマに仕立て、主人公の真っ直ぐな気持ちに感化されたヒロイン達が次第に心と体を開けていく展開である。主人公が善人かつ果報者過ぎる気もするが、内容が面白く読んでいて心地よい。惜しむらくは全4室5人のヒロインに対してどうしても順番に当たっていく流れになるため、良くも悪くもオムニバス形式のようになってしまい、情交もややソフトなところである。実は莫大な資産を有する気高い未亡人、快活な女優の卵、プライドの高い秘書と可憐ながらしたたかな高校生の姉妹、Mっ気抜群の美術教師、バラエティに富んだヒロイン達がどれも実に魅力的で役者が揃っているだけにもう少しじっくり読みたかった部分はある。それでも「いじらしい」「けなげ」「愛らしい」という表現を多用してヒロインを可愛らしく描写しているし、情交後のベッドでニブチンな主人公に少し呆れながらも愛情を確認し合うような場面もあって悪くない。最後は立ち退きも無事に済んで主人公の安アパートに集結したヒロイン達との新たな生活が綴られるが、ここでもドロドロした嫉妬による奪い合いもなければ1室に同居するでもなく、主人公が光源氏のごとく振舞う「通い婚」の形にしていて違いを見せている。ミラクルと言えばこんなミラクルな物語も無いだろうが楽しく読むことのできる秀作と言えよう。

DSK