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平和構築と国連 の商品レビュー

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2009/10/07

国連機関が進める幅広い分野に渡る活動の中にあって、戦争や紛争というメディアや報道のセンセーショナルな取り上げ方もあいまって平和維持活動(PKO)に対する関心は、日本の自衛隊派遣と憲法解釈との対立もあってよく人々の耳に触れる話題であるように思います。その一方で、平和維持活動開始の決...

国連機関が進める幅広い分野に渡る活動の中にあって、戦争や紛争というメディアや報道のセンセーショナルな取り上げ方もあいまって平和維持活動(PKO)に対する関心は、日本の自衛隊派遣と憲法解釈との対立もあってよく人々の耳に触れる話題であるように思います。その一方で、平和維持活動開始の決定を下す国連の安全保障理事会での議論や中身について知られているかというとそうではないように思われます。概して安保理での議論がニュースに取り上げられるのも北朝鮮が核実験をした先月以前はあまりなかったともいえます。 同じ現場にあって情報量に決定的な差があるように思える国連安保理について、ここ数年の間に行われてきた組織改変は、現代の国際情勢や問題構造の複雑化になるたけ即応できるような趣向がこらされたものであるように思えます。国連や紛争問題の現場から離れてしまってから久しい私に取ってこのポイントのアップデートは必要不可欠でした。その点でこの本の中でも特に印象的だったのが、1章、3章、4章の各論文でした。 特に、第3章と第4章の特集論文2本の比べ読みは、現在、国連の平和構築分野が抱える問題を理解する上では外せない者だと思います。第3章:『国連における平和構築支援の潮流』(山内麻里氏)では、2005年に設立された平和構築委員会(Peacebuilding Commission:PBC)の設立経緯を、ガリ元事務総長時代に発表された『平和への課題』から、ブラヒミ・レポート、ハイレベルパネル報告書、そしてアナン前事務総長時代の報告書『In larger freedom』などにおける議論の成熟と紛争の質的変容を繁栄したPKO部隊の対応体制の変化などをふまえながら解説されています。 一方で、こうした議論の末に権限を集約された事務総長特別代表の下、統合されたミッションのもと組織・分野間の壁を取り払い軍隊、警察機構、行政機関が横断的に組み合うことで現場で生まれる問題や今までに無かったコストについて論じたのが第4章:『国連統合ミッションにおける人道的ジレンマ』(上杉勇司氏)です。この読み比べにより、ニューヨークとPKO活動地域という2つの現場で起きる現実問題の質的違いが見てとれてとても参考にありました。 その分野での専門的知識を要求される本ですので、特に感心のない人には本屋さんで探し出すだけでも大変な本かもしれません。でも個人的には学ぶことの多かった読みやすいありがたい本でした。

Posted byブクログ