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近世の庶民文化 の商品レビュー

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2013/03/10

江戸時代、江戸・大坂・京都・堺などの町人文化を、近松・西鶴・歌麿などの作品を通して解析しようという趣旨の本。「西鶴」の章がボリューム、内容ともに圧巻で、当時の町人文化にあって花開いた実質的な資本主義経済や、商人たちの倫理観、性風俗などが浮き彫りにされる。 上から押しつけられようと...

江戸時代、江戸・大坂・京都・堺などの町人文化を、近松・西鶴・歌麿などの作品を通して解析しようという趣旨の本。「西鶴」の章がボリューム、内容ともに圧巻で、当時の町人文化にあって花開いた実質的な資本主義経済や、商人たちの倫理観、性風俗などが浮き彫りにされる。 上から押しつけられようとしていた朱子学/儒学に抵抗し、自らの文化や信条を生み出そうとしてゆく庶民の力強さが生き生きと描かれていて、興味深い。 もっとも、都市から遠く離れた農村・漁村では当然これとは違った庶民文化があったはずで、たぶんそれは、中世などとさほど変わらないものだったかもしれない。そうしたムラの文化については、民俗学の本に譲るところであろう。 網野善彦によると、市場経済は中世の頃にすでに形成されていたが、江戸時代の町人文化圏においてはより資本主義に近い形にまで発展していたのだろう。しかしそれは、国家や官僚、制度によってシステム化されたものではなく、どうやら庶民たちのあいだでの、自然発生的ないきさつであったと思われる。 とはいえ、この本で江戸町人の生活がすっかり明らかになったわけではなく、もう少し類似の書物で調べておいたほうがよさそうだ。

Posted byブクログ