「新・日本的経営」のその後 の商品レビュー
戦後の復興期から高度経済成長期にかけて完成したと言われる「日本的雇用システム」は、1990年代以降、変容したと言われることが多い。それは、例えば、「バブル崩壊による日本企業の業績の低迷」「ソ連をはじめとする社会主義国の体制崩壊による、真のグローバル市場の誕生」「ICT技術の発達が...
戦後の復興期から高度経済成長期にかけて完成したと言われる「日本的雇用システム」は、1990年代以降、変容したと言われることが多い。それは、例えば、「バブル崩壊による日本企業の業績の低迷」「ソ連をはじめとする社会主義国の体制崩壊による、真のグローバル市場の誕生」「ICT技術の発達がビジネスのやり方に与えた大きな影響」等を契機とすると言われることが多い。 そういったビジネス環境の変化の中、日本では、1995年に当時の日経連が発行した「新時代の日本的経営」が、「日本的雇用システム」が変容するきっかけとなったとする見方も多い。本書のテーマである、『「新・日本的経営」のその後』は、そういう背景を踏まえたものであり、1990年代以降の「日本的雇用システム」の変容を扱った論文がいくつか掲載されている。 その内の1つである牧野論文は、その変化を下記のように記述している。 【引用】 「新・日本的経営」戦略のねらいはなにか。日本の雇用・賃金慣行を「競争原理」「市場原理」の上に乗せ、その「質的転換」を図ることである。中心は、「雇用ポートフォリオ」「成果主義賃金」にほかならない。「構造改革」と一体の、このような財界戦略により、ここ10年ほどで「日本の雇用」「日本の賃金」の様相も大きく変わった。 【引用終わり】 「雇用ポートフォリオ」とは、それまでの「長期雇用・正社員」ばかりではなく、もっと柔軟に雇用できる層(いわゆる非正規社員)も活用していこうという提言であり、これ以降、非正規労働者が増加し、日本の貧困問題の萌芽をつくったという見方も多い。 逆に、非正規労働者の増加分は、自営業従事者の減少でマクロ的にはバランスがとれており、正社員自体の数はマクロでは減っていない、あるいは、もう一つの「成果主義賃金」も一時の流行で終わり、定着せず、「日本的雇用システム」の変容の仕方は大きなものではなかった、という議論も存在している。 これらの議論は、関心のない人にとってはどうでも良いことかもしれないが、私のように大学院で人事管理を学んでいる者にとっては、非常に興味深いテーマなのである。
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