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増補 司馬遼太郎の「場所」 の商品レビュー

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2021/11/11

松本健一 「 司馬遼太郎 の場所 」 司馬遼太郎論。司馬文学から 日本人のアイデンティティを取り出そうとしている感じ 三島由紀夫の「天皇がなければ、日本は空っぽ」とした姿勢と、司馬遼太郎の「天皇に収斂せず、美しい日本を見出そう」とした姿勢を対比させた文面は面白かった 鳥瞰...

松本健一 「 司馬遼太郎 の場所 」 司馬遼太郎論。司馬文学から 日本人のアイデンティティを取り出そうとしている感じ 三島由紀夫の「天皇がなければ、日本は空っぽ」とした姿勢と、司馬遼太郎の「天皇に収斂せず、美しい日本を見出そう」とした姿勢を対比させた文面は面白かった 鳥瞰により小説を書いたり、事実を一つの出来事によって象徴して虚構を作る手法は 他の作家の人も行っているので、司馬遼太郎論としては弱い気がする 事実より美学を優先する英雄歴史小説にあまり現実味を感じないが、「美しいものを見ようと思ったら目をつぶれ」という言葉は なるほど と思った 井上ひさしとの対談、「街道をゆく」モンゴル と アイルランド紀行、絶筆「風塵抄」は 読んでみたい 司馬遼太郎の戦後とバブル経済後の日本観は バランス感覚の良さを感じる *戦後社会がやってきたとき、明るい世界に出たような気がして、敗戦を革命と同質のものとして理解した *日本の発展は終わりで、あとはよき停滞、美しき停滞をできるかどうか。これを民族の能力をかけてやらなければならない 「街道をゆく」は 天皇の物語がない 美しい日本を天皇の物語なんかに収斂させないという意思〜ものづくりの美しさ、日本人の精神 司馬遼太郎の執筆姿勢 *イデオロギーや学問の体系でなく、理性と気概によって生きた漢(おとこ)を描いた〜イデオロギーや学問的な体系に対する批判 *事実に忠実であるより、美学を物語る〜その美学によって、日本人を明るい方へ鼓舞した〜戦後の日本人に「坂の上の白い雲」を見つめさせようとした *細部の事実にこだわる〜細部というものがなければ、小説でなく見取り図(学問体系)になってしまう 鳥瞰による小説手法 *高い視点から その人物と人生を鳥瞰する〜その人物と人生のすべてみようとする *一人の人間だけでなく、隣にだれがいたか、どこでだれと話し、どの方角にどれくらいのスピードで歩いたか、彼が通ったあとに歩いたのは誰か 文化とは 民族の誇りの意識、自尊心〜人間が生きてゆくかたち

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2020/08/03

司馬遼太郎はほとんど読んでいないが、とにかく中高年おじさん達に影響力のある人なので、と思って読み始めたが、これ一冊読むと大部分の司馬遼太郎作品は読まなくても良いような気になった。「街道を行く」シリーズだけは拾い読みしようと思う。

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2018/12/06

司馬遼太郎の歴史小説の魅力について語った本です。 著者は司馬遼太郎を、吉川英治の衣鉢を継ぐ国民作家としてとらえようとしています。ただし吉川が、『宮本武蔵』などの作品を通して民衆をファシズムの方に向けて組織する役割を果たしたのに対して、司馬は「鳥瞰」という方法を用いることで、歴史...

司馬遼太郎の歴史小説の魅力について語った本です。 著者は司馬遼太郎を、吉川英治の衣鉢を継ぐ国民作家としてとらえようとしています。ただし吉川が、『宮本武蔵』などの作品を通して民衆をファシズムの方に向けて組織する役割を果たしたのに対して、司馬は「鳥瞰」という方法を用いることで、歴史上の人物を文学通り眺め渡すと同時に、歴史のなかを生き歴史をつくっていった登場人物の姿を浮きあがらせていると論じています。 また、「ちくま文庫」に収録されるにあたって増補された文章では、司馬の『街道をゆく』シリーズ(朝日新聞社)が、天皇を美の原理としてかかげた三島由紀夫の自決に対するアンチ・テーゼの提出だったとする著者の見解が示されています。

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2010/04/01

美学というのは作者の生き方の好みである。イデオロギーが体系として1に強制されるのとは違う。司馬さんがイデオロギーを嫌うのは、たんにマルクス主義の物神化をさしていたわけではない。 司馬さんはイデオロギー、またそれに支配された政治を嫌う。司馬が使っている鳥瞰とはたんに鳥が高い空から地...

美学というのは作者の生き方の好みである。イデオロギーが体系として1に強制されるのとは違う。司馬さんがイデオロギーを嫌うのは、たんにマルクス主義の物神化をさしていたわけではない。 司馬さんはイデオロギー、またそれに支配された政治を嫌う。司馬が使っている鳥瞰とはたんに鳥が高い空から地上を見下ろす、空間的な視座でなはいそれは時間的な意味を持っている。 人間としての誇りを持って国を愛し、民族の行く末を思い、それぞれの勤めを果たす。 現在の日本を創ったのは、万世一系の日本ではなく、明治という国家なのだ。 歴史は文学の華である。

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