周恩来秘録(上) の商品レビュー
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2007年刊。著者は天安門事件脱出組。元中共文献研究所所属、ハーバード大学フェアバンク研究所、コロンビア大学東アジア研究所所属。◆タイトルから予想される全般的な人物評伝ではなく、殆どが文化大革命記録。ただ、周恩来と毛沢東の関係を中心に据え、明瞭な叙述でかなり判りやすい。◆実際、毛周関係がこれほど続いたのは、他の共産党関係者との比較から見て何とも不可思議。◇一言で言えば、根っからの権力亡者毛の顔色を巧みに伺い、そのため多くの者を切り捨ててきたが、その与えられた場で中国発展に尽くした最優秀のテクノクラート。 それ故、猜疑心に塗れた毛が最終的には見放すことはなかったと要約できそう。マゾ的に辛抱し続け得たのも凄い。◆そんな中、関係者の周恩来評が興味を引く。彭徳懐「世渡り上手の古狸」。鄧小平「周恩来総理がいなければ文革の『状況はさらに悪くなっていた』が、これほど『長びくことはなかった』」等。◆ただ、本書は周恩来が主テーマなので、中国共産党関係者の権謀術数と権力闘争にのみ焦点が合い、一般民衆の模様は書かれない。が、権力闘争と周と毛の思惑は細かい。◆林彪期の文革が、軍内の対立を招き、内乱状態だった点は個人的に新奇。 ◆上巻は、第二次世界大戦中の毛・周関係の概略と文革初期から毛沢東・林彪対立の深刻化の頃まで。
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いやー、時間かかりました。周恩来を語るには毛沢東を抜きには語れませんが、これって毛沢東の本だったっけ?と混乱(笑)しかし、大躍進、文革がなかったら中国ってどんな国になってたんでしょうね。下巻もがんばって読みます。
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毛沢東が戦中・戦後に行った悪行三昧と、自国民や周辺国にもたらした災厄としか言いようのない愚行の数々は、『マオ』などで隠しようがないほど明らかになっている。 しかしその過程で、慈父と称えられた周恩来の果たした役割は、専門家以外にはほとんど知られていないのだろう。私もここに記された、...
毛沢東が戦中・戦後に行った悪行三昧と、自国民や周辺国にもたらした災厄としか言いようのない愚行の数々は、『マオ』などで隠しようがないほど明らかになっている。 しかしその過程で、慈父と称えられた周恩来の果たした役割は、専門家以外にはほとんど知られていないのだろう。私もここに記された、無残としかいいようのない中国現代史の裏面で、苦しみもがきながら周恩来がもたらした光と影を思い知らされた。 その影の部分を糾弾することは簡単だが、私はむしろ、過酷で終わりのない政治闘争の中で生き残らなければならなかった・生き延びることができなかった「彼ら」の在りように、胸のつまるような思いがこみ上げた。
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