大空襲と原爆は本当に必要だったのか の商品レビュー
まだ読みかけなんだけどとりあえず。巨悪をすこしましな悪が懲らしめたとして、すこしましな悪が免責されるのか、という昔からある問いなんだが、この問いに皆が向き合えるかどうかはポジショニングいかんだったりするわけだ。戦勝国側からようやくこういうものが出てきたというわけだ。
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日本では大空襲や原爆の被害の記録を保存しようという運動はあるが、それを引き起こしたアメリカに対して大きな声で糾弾したりはしない。アメリカはアメリカで、無差別爆撃や原爆は日本を早く終戦に持ち込み、兵士の損失を減らすためだと言いはる。自分たちにはまるで罪がなかったかのように。東京裁...
日本では大空襲や原爆の被害の記録を保存しようという運動はあるが、それを引き起こしたアメリカに対して大きな声で糾弾したりはしない。アメリカはアメリカで、無差別爆撃や原爆は日本を早く終戦に持ち込み、兵士の損失を減らすためだと言いはる。自分たちにはまるで罪がなかったかのように。東京裁判が不当だという人たちはこの点を指摘する。だから、もと連合国側の人からこのことを問題にすることはないのだろうと思っていたら、イギリスの哲学者がこのような本を出した。重点はイギリスのドイツへの無差別爆撃とそれをめぐる歴史的経過であるが、その犯罪性の指摘は日本の場合にもあてはまる。イギリスでも、本来軍事目標以外への爆撃は非人道的なこととされていたのに、それを実施することになったのはなぜか。反対の声は起こらなかったのかを丹念に追い、かつそれらを犯罪と指弾したもの。 本書によれば、ドイツへの爆撃も最初はイギリス側の爆撃機の被害の方が大きかったらしい。性能の低いイギリスの爆撃機は優秀なドイツの戦闘機に大量に打ち落とされたらしい。メッサーシュミットだ。したがってドイツへの爆撃は非常に危険を伴うことであった。かつ、ドイツへの爆撃はドイツ国民の厭戦意識をねらうものであったが、実際はかれらの士気を奮い起こさせた。被害にしても、たちどころに復興するだけの力を持っていたし、終戦に至る直前までドイツの経済力は衰えなかったという。しかも、ドイツの敗戦がほとんど必至になった段階で、日本の京都に匹敵するドレスデンを爆撃したことは、イギリスの非文明性さを物語るものであった。本書はドイツへの爆撃に多くのページが割かれ、日本の記述は少ないのだが、アメリカがヨーロッパへの爆撃では軍事施設にしぼっていたのに、日本に対しては無差別の絨毯爆撃を行ったことは特記すべきことであろう。
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