弱き者の生き方 の商品レビュー
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考古学者の大塚初重さん、18歳、輸送船に魚雷が。ワイヤロープにつかまり上に上がるとき、脚にしがみついてくる2~3人を、両脚で、燃えてる舟底に蹴落とした。まさに、蜘蛛の糸の世界。五木寛之さん、12歳、ピョンヤンで終戦。ロシア兵が病気で寝ている母を軍靴で踏みつけ、布団ごと庭に放り投げた。ガンジス川で、ピョンヤンで死んだ亡き母の髪を灰にし、川に流した。このお二人の対談集です。「弱き者の生き方」、2007.6発行。人間は皆弱き者で、それぞれの人の道を懸命に生きていくのある。
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「日本人再生の希望を綴る」という副題はいただけないが、いい本だった。中身のある本というべきだろうか。 軍隊の話、引き揚げの話の総括が泣ける。 泣くのが目的ではないのだが・・・ なんというか、東シナ海で沈められた船や満州朝鮮からの引き揚げの話を今まで読んだことはある。なので事...
「日本人再生の希望を綴る」という副題はいただけないが、いい本だった。中身のある本というべきだろうか。 軍隊の話、引き揚げの話の総括が泣ける。 泣くのが目的ではないのだが・・・ なんというか、東シナ海で沈められた船や満州朝鮮からの引き揚げの話を今まで読んだことはある。なので事実としては似たような話はいくつも知っている。 しかし、それは彼らが中年の時期や初老の時期に書いたものであり、またそれに何らかの目的(告発する、記録する、訴えるなどなど)があった。 しかし、戦争体験者が老齢となり、老人の立場心境からそれを語るのは、これはこれで非常に価値がある。 現役の視点と隠居の視点というべきもので、どちらも価値があるが、後者は、もしかするとものすごく価値があることではないかと思った。 「戦争は悲惨だ」「こんなむごいことがあった」というのはその通りだけど、世の中には悲惨なことやむごいことはいくらもあるわけで、それは戦争という形でなくとも、いろいろな形で繰り返され、それがなくなることはないだろう。 「そのようなことを繰り返さないために我々はどうすればいいか」が現役の視点だとすれば、 「そのようなことを、我々はどのように受け止めるべきか」が隠居の視点。 後者を、もっといろいろと読んでみたい。 五木氏の本をもっと読もうか。
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経験者の言葉ほど重いものはない。 私はどこの地に立っても、足元の土を感じながら、あの頃何があったのか、どれだけの人が命を落としたか、どんなに無念だったか、考えずにいられない。 その命と犠牲の柱の上に私たちは生きてるわけでしょ。 ならば、やっぱり今の時代をガンガン切り開いてアドレナ...
経験者の言葉ほど重いものはない。 私はどこの地に立っても、足元の土を感じながら、あの頃何があったのか、どれだけの人が命を落としたか、どんなに無念だったか、考えずにいられない。 その命と犠牲の柱の上に私たちは生きてるわけでしょ。 ならば、やっぱり今の時代をガンガン切り開いてアドレナリン出しながら生きていこうと思うんだよね。 P5 絶望におちるのではなく、希望にすがるのでもなく、微笑みながら夜をいく人、というのが私の感じたことだった。 P39 東京大空襲:日本人の、敵を恨むという感情をわりあい早く消し去る国民性というものは古代からあるんでしょうか。 P57 極寒のシベリアで夜中、虱が隣で寝ている人から自分のほうにうつってくることが嬉しかったというんです。 P66 無言でたちあがっていく。そういう女性が3人、4人とソ連兵にジープに乗せられていく。そして朝、ボロ雑巾のようになって帰ってくる。(中略)同じ女性でありながら、近づいたらだめよ、そういう人は性病をもっているから、と子供にいう。 P104 大英博物館のように、世界中の植民地から持ってきたものを堂々と陳列しているのをみると、いったいどういう制震構造をしているのかと思いますね。 P111 北朝鮮に残留孤児が何千人いると思います? P162 人はすべて、この世という地獄に生まれてくるのではないか。その地獄のなかで、時として思いがけない歓びや友情、見知らない人との善意や奇跡のような愛にであることがありますよね。 P229 仏教では、人身受けがたし、という表現をする。人間として生まれるということは、稀有なラッキーなことであって、修羅・餓鬼道・畜生などといっぱいある世の中で、蚊にも生まれず、蠅にもうまれず、人としてこの世に生まれたということは、もうほんとに信じられないくらい奇跡で幸運なことである。だからその幸運な命を大切に、と言われているわけですね。 P232 かつて奈良時代に流行した言葉が、和魂漢才でした。 P239 ある時期は耐えること、涙をこぼしながらも耐えることが必要だなぁ、と思います。 P249 生きていくということは大変なことで、心が萎えてしまって生きる気力がなくなるときもある。(中略)引き上げてきた自分が無事に内地に戻ってこられた過程には、ずいぶんたくさんの人たちを押しやって、足で蹴飛ばしてきた、だからこの命はそういう人たちをのぶんまで生きてあげなきゃいけないんだ P250 本当に明るく生きるためには、暗さを直進する勇気をもたなければいけない、ほんとうのよろこびというものを知る人間は、深く悲しむことを知っている人間なのではないかと思う。 P255 ちゃんとした死に方なんていうものなんてない。ちゃんとした生き方があるだけなんで。 P256 悲というのは、そばにいるだけで、何も言わない。黙って相手の手の上に手をのせえt、相手の顔を見つめている。 P279 自分のなかには、命というものは自分だけのものではなくて、帰ってこれなかった人たちから預かった命だという、そういう意識があった。
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どうしたって追いつかないところにいってしまった人が 私を急きたてる。 他人と較べたりせず 自分で正しいと思うように生きることを 肯定してくれる。
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五木寛之と考古学者である大塚初重との対談本。戦中・戦後の悲惨な体験が、糧というよりは重荷となりながらも生きてきた二人の話は、やはり深い。考えさせられる一冊。2007/10/08
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