リトビネンコ暗殺 の商品レビュー
スパイもののフィクションの様な話。本の中にもあるようにリトビネンコの言っていることが全て正しいかはもちろん分からない。 ただ、ロシアは普通じゃないって十分事は分かる。 リトビネンコが実在し、そして毒殺されたということは紛れもない事実で、しかも私が現地で見聞きしたことと合致する部...
スパイもののフィクションの様な話。本の中にもあるようにリトビネンコの言っていることが全て正しいかはもちろん分からない。 ただ、ロシアは普通じゃないって十分事は分かる。 リトビネンコが実在し、そして毒殺されたということは紛れもない事実で、しかも私が現地で見聞きしたことと合致する部分があり、決してこれはフィクションではないのだ。という事は分かる。だけれど、陰謀だの暗殺だのということは、やっぱりまだまだ実感がわかない。 しかし、この本を読む多くの人に物事を見る際の一つの新しい見地を与えてくれるだろう。 私たちにとって困難なのは、これが物語でないと言うことを受け入れることだとだ。この本に出てくるリトビネンコもベレゾフスキーもポリトコフスカヤもザカーエフも、そしてプーチンも実在(した)の人物であり、プーチンに至っては現在もロシアの首相を務めている人物で、2012年の選挙結果では大統領にまたなるかも知れないのだ。 国の最高権力者が暗殺者だなんてロシア国民じゃなくても信じたくない現実だ。 自分がチェチェンと、その他の旧ソ連国で経験したことから言うと、このような国では、私の常識を超えてたことが、些細なことから国家の陰謀まで、当たり前に起こりえるということ。 それを正視して、現実のこととして受け入れるのは、少しでも実際に見た自分でもとても難しい。本を読んだだけでは受け入れることは少なくとも私にはできない。何か一つでも多くの人が、自分自身に関わる問題として認識して受け入れていかなければならない。 しかし、リトビネンコはかっこいい。できるスパイってみんなかっこいいのかなぁ。
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登場人物が多すぎて関係が分かりづらい。 謀略説に基づくフィクションか、事実の積み重ねのノンフィクションかは読者が判断すればいい。 しかし、推理の部分は置いておくとして事実としてあったことは否定できないから、すべてが嘘とはいえないと思う。ロシアという国は怖いという印象はぬぐえな...
登場人物が多すぎて関係が分かりづらい。 謀略説に基づくフィクションか、事実の積み重ねのノンフィクションかは読者が判断すればいい。 しかし、推理の部分は置いておくとして事実としてあったことは否定できないから、すべてが嘘とはいえないと思う。ロシアという国は怖いという印象はぬぐえない。
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2006年、元ロシア諜報部員アレクサンドル・リトビネンコがロンドンで変死し、体内から放射性物質ポロニウム210が大量に検出されると言う事件が起きた。 当書では、リトビネンコがロシアでのFSB職員として活動していた時代から、オリガルヒ(新興財閥)のボリス・ベレゾフスキーと協力関係を...
2006年、元ロシア諜報部員アレクサンドル・リトビネンコがロンドンで変死し、体内から放射性物質ポロニウム210が大量に検出されると言う事件が起きた。 当書では、リトビネンコがロシアでのFSB職員として活動していた時代から、オリガルヒ(新興財閥)のボリス・ベレゾフスキーと協力関係を結ぶが、やがてイギリスへ亡命するもののロンドンで死を迎えることになる経過を、当時のロシア情勢を踏まえて追っている。 著者は、死んだアレクサンドル・リトビネンコの友人であり、彼の亡命を手助けしたゴールドファーブとリトビネンコの妻マリーナであるため、プーチンを厳しく指弾している点は割り引いて捉えるべきであろう。 しかし、1990年代エリツィン政権下のクレムリンやオリガルヒの活動、チェチェン紛争、プーチンが政権を掌握する過程など、興味深い事象が多く描かれており、リトビネンコその人よりもむしろそちらが主題とすら読める。そのようなシーンでは、リトビネンコはむしろ脇役に回り、政商ベレゾフスキーが主役を演じていると言ってもいいだろう。 大量の登場人物の把握にかなりの労力を要するが、プーチンのロシアが成立するまでの、ある過程を知ることができる一冊。 ・・・・・・・・・とか書くとそれっぽいなあ。本当は「〜エフ」とか「〜コフ」とか「〜スキー」とか言う人名の嵐のおかげで、かなり混乱しながら読み倒したのでした。まあでも、これでモスクワ劇場事件やチェチェンの概略はわかった、かな〜〜????
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旧体制下のソ連でKGB、改革後はその後身であるロシアのFSBで諜報員として働いていたアレクサンドル・リトビネンコは、FSBの腐敗を告発したことで追われる身となり2000年にロンドンへ亡命。そこでプーチンとFSBを糾弾し続けていたが、2006年、ポロニウム210によって毒殺された...
旧体制下のソ連でKGB、改革後はその後身であるロシアのFSBで諜報員として働いていたアレクサンドル・リトビネンコは、FSBの腐敗を告発したことで追われる身となり2000年にロンドンへ亡命。そこでプーチンとFSBを糾弾し続けていたが、2006年、ポロニウム210によって毒殺された。彼の亡命を助けた友人と彼の妻が、世界に向けて真実を訴える為に出版した一冊。 エリツィンの後継者としてロシア大統領になったプーチンが元KGBであることは周知の事実であり、目的の為なら殺人もいとわないであろうことは数々の書物で指摘されている。本書でも描かれている彼の性格と手法が事実とすれば、背筋が寒くなるほどだ。 対立軸はチェチェン紛争。ロシアで発生したいくつものテロ活動は、ロシア政府がチェチェン攻撃を正当化する為に実行した自作自演だったというのがリトビネンコらの主張だ。真相はわからない。モスクワの劇場占拠事件や北オセチアの学校占拠事件は日本でも盛んに報道され、チェチェン分離独立派によるものとされていたのを覚えている。あの背後で何が起きていたのだろうか。 当然、ロシア政府やFSBは彼らの陰謀説を否定する。だが訳者あとがきで指摘されているように、「いわゆる反体制派やそのまわりで、何者かに殺される、あるいは不審な死を遂げる人間が多すぎる」のは動かしがたい事実だろう。本書にはそれこそ安直なスパイ小説より多くの殺人事件が登場するのだ。 現実にこういう世界があるというのが恐ろしい。政府も警察も司法も信用できない国で、人々は何を拠り所に正義を貫けるだろうか。日本に生まれて良かったと安堵すると共に、世界が平和になるのはかなり遠いと思わざるを得ない。
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暗殺されたリトビネンコとその背景にある事件、そしてキーパーソンたちを繋ぐソ連崩壊後のロシアを一本の線に繋げた著作。リトビネンコ暗殺というタイトルは早川書房の営業部が押したものだと思うが、原著はdeath of dissident(反対派の死)であり、この意味で言えばリトビネンコ...
暗殺されたリトビネンコとその背景にある事件、そしてキーパーソンたちを繋ぐソ連崩壊後のロシアを一本の線に繋げた著作。リトビネンコ暗殺というタイトルは早川書房の営業部が押したものだと思うが、原著はdeath of dissident(反対派の死)であり、この意味で言えばリトビネンコの死に代表されるポリトコフスカヤの銃殺、そして同様にアパート爆破事件調査に関わった政治家やジャーナリストの死を含む現ロシア政権にとっての「反対派の死」とその背景にあるもの、つまりプーチン政権の本質を考えさせたいという著者の思いがあると思う。 正直、2点ほど疑問点というか、納得できない点があるが、あとは非常に読む価値のある本だと思った。疑問点の第1は、現在明らかにロシア政府の干渉と攻撃の対象になっているベレゾフスキーを擁護する事は十分に理解できるが、93年頃からのオリガルヒとしての彼も安易に「改革者」や「民主主義者」として評価するのは甚だ疑問だ。ベレゾフスキーを始めとする多くのオリガルヒがロシアの富を「あらゆる手段」を用いて収奪した事実は明らかであり、その点まで政争やKGBとの対抗で語るのは無理があるし、信頼性にたらない。確かに、プーチンとベレゾフスキーの比較で言えば、相対優位ということでベレゾフスキーの行為は民事事件レベルで、プーチンのように刑事事件ではないかもしれない。しかし、ベレゾフスキーが結果としてその後、民主化支援やリトビネンコとの協力に回ったからと言って過去の彼を過大評価する事には疑問だ。しかし、私の読み終わった感想としては、著者は現在のベレゾフスキー批判を前提にこうした内容を恣意的に書いており、その意味でベレゾフスキー偏見は中和されるかもしれない。事実、政商であったベレゾフスキーに対する政治学的分析や論文はなく、ジャーナリスティックな側面からの報道が偏見を生んでいた事実は考えられる。 第2に、人から著者が聞いた言葉や場面を著者が推測で本書の中で語っている点。これは正直、誇張や誤認を生みやすくし、且つ情報の信頼性に疑問を持たせる。またこうした記述法によって全体が小説のように感じられ(実際に事件自体が小説のように現実離れしている点は明らかだが)、正しく伝わらないことも考えられる。 しかし、それでもリトビネンコの関係者が今回の事件、そのもののみならず、ロシア在住時代からのリトビネンコについて、またプーチン政権の危険性を指摘している事には大きな意味がある。私自身としては今回の事件はFSB以外に行える能力は有しておらず、他の選択肢は動機の側面にばかり注目しているが実行力がFSBにしかないのは明らかに思う。しかし、ロシアの恐ろしさをこうもまざまざと見せられた時に、ロシアを研究する事、あるいは隣国にロシアがいることに今まで以上の危機感を抱き、日本政府や日本国民にその危機感がない事に不安を感じる。 ちなみに暢気に「リトビネンコは優しすぎた」などと表する佐藤優も身の程を知るべきではないか。もしも、仮に彼の操作が国策であり、彼が本当にロシアの国益ではなく日本の国益の為に働いていたとすれば、彼は日本政府よりもロシアから抹殺されるはずだろう。佐藤優がロシアの国益の為に働いていた事は個人的には明らかに思う。その一方、佐藤を黙らせない当局を見ると日本に置ける佐藤優の意味や価値も低かったと言わざるを得ない。
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