私と娘、家族の中のアスペルガー の商品レビュー
この本は、『アスペルガー的人生』の リアン・ホリデー・ウィリー氏の2冊目の単著である。 訳者も前作に続いて、ニキ・リンコ氏。 著者が自らのアスペルガー障害と3人の娘 (うちひとりは特にアスペルガー的傾向が強い。)の子育てに 真摯に明るく向き合う姿勢には、とても勇気づけられる。 ...
この本は、『アスペルガー的人生』の リアン・ホリデー・ウィリー氏の2冊目の単著である。 訳者も前作に続いて、ニキ・リンコ氏。 著者が自らのアスペルガー障害と3人の娘 (うちひとりは特にアスペルガー的傾向が強い。)の子育てに 真摯に明るく向き合う姿勢には、とても勇気づけられる。 失敗しても悩んでも、 そこから家族みんながうまくいくための方法を見つけ出していく。 著者はこの本を、みんなで作ったと言う。 彼女が書き、他の全員が意見をいい、案を出したのだと。 訳者のニキ・リンコ氏自身もアスペルガーの当事者ということもあってか、訳文であっても、 アスピィ(著者はアスペルガーのことを「アスピィ」という。 そういう表現を使う英語圏の当事者は他にも多い。)の著者が 目の前で話しているかのような親しみやすい読みやすい文体は 損なわれていない。 前作も本作も、基本的には自伝であるのだが、 この本をさらにおもしろくて有益に感じさせるのは、 あとについている資料編である。 彼女はNT(ニューロティピカル。定型脳の人たちのこと。)との違いや コミュニケーションがうまく行かなくて悩んだことなどを ただ自分の経験だけに終わらせない。 自分の経験から、法則を見つけ出して文章化するのがうまいのだと思う。 前作のハウツー編も今回の付録も、 アスピィがどのようにNTの世界を見ているかを教えてくれる。 たとえば、「雑談という謎に挑む」と題して、 彼女は真剣に、会話をはじめるコツや話題を変える時に どうするかなどについて考えている。 彼女が実際に言ってしまって失敗したことがある 修正前の文例と修正後の文例がまたおもしろい。 「アスピィ本人のための自己アファーメイション文例」の言葉は、 アスピィでもそうでなくても、おもしろく、役に立つ上に、励まされる。 ・私は欠陥人間ではありません。ほかの人とちがっているだけです。 ・同級生や同僚に好かれるだけのために、 自分の値うちを犠牲にするつもりはありません。 ・・・(中略)・・・ ・私は、本来の自分を、自分で受け入れます。 (p.274より) ここにあるのは、障害のある本人とその家族の個人的な物語である と同時に、助け合ってともに生きる家族の普遍的な物語である。
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