書物漫遊記 の商品レビュー
「名書、奇書、珍本……博覧強記の筆者による異色の読書案内」(カヴァーより)取り上げられている20余の書物の内、私が知っているのはほんのわずか。だけど、それぞれに付されたタイトルだけでも、なんだか読みたくなるし、実際にそれを手にしたくなってしまう。読書案内、となってますが、『木村・...
「名書、奇書、珍本……博覧強記の筆者による異色の読書案内」(カヴァーより)取り上げられている20余の書物の内、私が知っているのはほんのわずか。だけど、それぞれに付されたタイトルだけでも、なんだか読みたくなるし、実際にそれを手にしたくなってしまう。読書案内、となってますが、『木村・相良独和辞典』まで採られているのですよ(その章のタイトルは「接続法第二式」)。辞書を引き込んで、それで同じものが何代目か、というのはわかりますが、5年に1冊の割、って、やっぱりすごい(もっとも御本人によればこの消耗度は平均よりも少ないそうですが、その「平均」っていったい……!!)。とはいえ、この章とてまた、辞書を呼び水にしてそれを主役とした、とっても面白い随筆。他の本についてもそうです。採られている本に馴染みがないからといって楽しめない、ということはありません。(私は個人的には、これほどのドイツ文学の大家が「独独辞典」のみならず、学生のころから「木村・相良」を肌身放さず携えているんだ、ということにちょっと感銘を受けました、あれはいい辞書です、初心者向けではないけれど絶対に必要な辞書です)。もちろん辞書だけではありません、著者自身の著作もあれば野尻泡影、谷崎潤一郎、古今亭志ん生、吉田健一、江戸川乱歩……、このように並べると、特に「奇異」な読書案内でもありませんね。或る本をダシにして、それをめぐって自在に書かれた面白い話、として読めばいのかもしれません。
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