アメリカ の商品レビュー
「あなた」とは誰だろう。著者の端正な語りはこの二人称で「非道の大陸」「アメリカ」という世界へと読者を誘導する。飛行機に搭乗して(という第一章を経て)ドライブするこの大陸は、それこそカフカの作品を思わせる微細な動作の描写でこちらを惹きつけ、筋なんてあるんだかないんだかわからないにも...
「あなた」とは誰だろう。著者の端正な語りはこの二人称で「非道の大陸」「アメリカ」という世界へと読者を誘導する。飛行機に搭乗して(という第一章を経て)ドライブするこの大陸は、それこそカフカの作品を思わせる微細な動作の描写でこちらを惹きつけ、筋なんてあるんだかないんだかわからないにも関わらずグイグイ読ませる。様々なところにこの主人公が見た(というか書き手によって誘導された「あなた」こと私たちが見た)世界の不条理に気付かされる。それらはスムーズな筆遣いの中に仕込まれたスパイスのようだ。なるほど美味なクセになる味
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著者と思しき主人公が「あなた」と呼ばれる、特殊な二人称作品。 フィクションなのか判別つけ難く、創作だとしても不思議ではありません。 「あなた」はアメリカ各地に滞在し、助手席に座り、人々と語り合います。 NY、シカゴ、LA、ボストン、北東部国境近く、コネチカット、フロリダ、インデ...
著者と思しき主人公が「あなた」と呼ばれる、特殊な二人称作品。 フィクションなのか判別つけ難く、創作だとしても不思議ではありません。 「あなた」はアメリカ各地に滞在し、助手席に座り、人々と語り合います。 NY、シカゴ、LA、ボストン、北東部国境近く、コネチカット、フロリダ、インディアナ、サンディエゴ、ペンシルバニア、ラスベガス、砂漠 書き下ろされた終章は夢のような一編です。
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レビューはこちらに書きました。 https://www.yoiyoru.org/entry/2019/03/19/014724
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アメリカの都市名は出てくるが現実離れしていて、人の名前は出てくるが章ごとに姿を消し。急に走り出したり裸だったりするのは演劇的でもあるし、印象として、晴れることのないハイウェイ、時々夜にはヘッドライトで行く道をさぐるという感じ。
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かつて「ユリイカ」に連載されていた、アメリカの各地を舞台にした連作短編集。多和田葉子さんの作品は、これまで『犬婿入り』しか読んだことがなかったが、その時の印象とは随分と違っている。最終章の「無灯運転」だけが書き下ろしなのだが、こちらのシュール感はまさしく多和田作品と安心する。連載...
かつて「ユリイカ」に連載されていた、アメリカの各地を舞台にした連作短編集。多和田葉子さんの作品は、これまで『犬婿入り』しか読んだことがなかったが、その時の印象とは随分と違っている。最終章の「無灯運転」だけが書き下ろしなのだが、こちらのシュール感はまさしく多和田作品と安心する。連載の短篇は作家自身が違ったタッチを試みていたのだろう。ロスやシカゴや砂漠の街と、アメリカ各地が舞台に選ばれ、「あなた」(それは読者である私でもあるか)が移動してゆくのだ。個々の作品も、そして全体としても"アメリカ"感が横溢している。
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物語が「あなた」といういろいろな人で語られる。 はじめはとても違和感があり、読み進めにくいけれど、 なれてくると大丈夫。 ちいさないろいろなストーリーがひっそりとあって、 どの物語も特別なようで普通な話。 いい話でも悪い話でもないけれど、 アメリカを旅して出会った人々とのことが...
物語が「あなた」といういろいろな人で語られる。 はじめはとても違和感があり、読み進めにくいけれど、 なれてくると大丈夫。 ちいさないろいろなストーリーがひっそりとあって、 どの物語も特別なようで普通な話。 いい話でも悪い話でもないけれど、 アメリカを旅して出会った人々とのことが書かれているので、 静かに、一緒に車に乗っているような気持ちになる。
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初めての多和田葉子。文章のリズムが独特で、心地よかった。アメリカの雰囲気がとても良く書けている。そうそう、と思いながら読了。
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タイトルはアメリカ批判の怖い小説にみえますが、いつもの多和田葉子さんらしい小説というか、とにかく読んでて心地よい酔いがまわります。
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そう言えばこんな感じのする小説だったけかな、と、初めて読んだものなのに、そんな感慨が沸いてくる。多和田葉子のこの本は、そんな本である。 よく小説を読んでいると、ジワジワと湿度だとか温度だとかが染み着いてくるような感じになるのだが、多和田葉子の小説から感じるそれは、粘性、だ。 ...
そう言えばこんな感じのする小説だったけかな、と、初めて読んだものなのに、そんな感慨が沸いてくる。多和田葉子のこの本は、そんな本である。 よく小説を読んでいると、ジワジワと湿度だとか温度だとかが染み着いてくるような感じになるのだが、多和田葉子の小説から感じるそれは、粘性、だ。 「容疑者の夜行列車」は、どこかカルヴィーノを思い出させるような軽妙さがあって、粘性、という言葉は思い付きもしなかったのだが、以前に読んだ「犬婿入り」では、そのじっとりした感覚が確かにあったようにも思う。 粘性、というと基本的な分類では不快さを呼び起こす言葉であり質感であるが、不思議と多和田葉子の文章からは、そういった快−不快という振れ軸を移動する心の動きを感じない。ひょっとすると単純に粘性などと言ってみたところで、肌に張り付いても容易に体温で乾き切ってしまい、パリパリと剥がれ落ちていくようなものに変質してしまうものであって、何か自分のよく知ったものの持つ質感で言い表すことが不可能な表現を、多和田葉子はものにしているのかも知れない。 誰かが彼女の書くという行為を「言葉の外へ出る努力」と評していたように思うが、それはクレオールにおける母語の外へ向かった動きというよりも、もっと遠く、言葉の持つ質感、クオリアを呼び起こさない世界への指向なのかも知れない。
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「あなた」と二人称なのか目を引く。作者の分身と思しき作家の「あなた」は、アメリカ各地を巡り、そこに住む人々と交歓し別れる。出会う人々は、出自がさまざまながら、マイノリティとしてアメリカで暮らす人たちで、「あなた」を通じて、その人生のドラマが浮かび上がってくる。透明な存在のようで...
「あなた」と二人称なのか目を引く。作者の分身と思しき作家の「あなた」は、アメリカ各地を巡り、そこに住む人々と交歓し別れる。出会う人々は、出自がさまざまながら、マイノリティとしてアメリカで暮らす人たちで、「あなた」を通じて、その人生のドラマが浮かび上がってくる。透明な存在のようで妙に存在感がある「あなた」が、不思議な軽やかさがあって面白い。 多和田作品を読むのはこれで3作目だけど、他の作品も面白そう。貪欲に読んでいくつもり。
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