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イーハトーブと満洲国 の商品レビュー

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6件のお客様レビュー

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2018/04/20

宮沢賢治と石原莞爾のユートピア観を法華経、国柱会を接点にして対比して考察した、意欲的な論考と言えるだろう。この着眼点は良いのだが、内容は物足りない。私自身は、戦前の日本社会に隆盛を極めた国柱会、田中智学について知りたくて読み始めたのだが、実証的な調査、記述も少なく物足りないのだ。...

宮沢賢治と石原莞爾のユートピア観を法華経、国柱会を接点にして対比して考察した、意欲的な論考と言えるだろう。この着眼点は良いのだが、内容は物足りない。私自身は、戦前の日本社会に隆盛を極めた国柱会、田中智学について知りたくて読み始めたのだが、実証的な調査、記述も少なく物足りないのだ。 最終章で著者の通俗的な社会観を披瀝するくらいなら、賢治、莞爾、智学について、実証的調査と批判的検討に力を入れて欲しかった。

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2014/08/16

宮沢賢治と石原完爾、まったく異質の二人が日蓮宗・田中智学の教えからイーハトーブと満洲国という理想郷を描いたことを読み解く、難解ながら国のあり方を考える上では必読の内容。

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2014/05/26

宮下 隆二 (著) 「イーハトーブと満洲国―宮沢賢治と石原莞爾が描いた理想郷」の感想。 詩人であり童話作家であり、教育者、ユートピア思想家であった宮沢賢治と、満洲事変の実質的な指導者といわれている石原莞爾。この一見異質にみえる二人を並べ、実はよく似ているのだということを論証して...

宮下 隆二 (著) 「イーハトーブと満洲国―宮沢賢治と石原莞爾が描いた理想郷」の感想。 詩人であり童話作家であり、教育者、ユートピア思想家であった宮沢賢治と、満洲事変の実質的な指導者といわれている石原莞爾。この一見異質にみえる二人を並べ、実はよく似ているのだということを論証している。 二人に共通する思想的な出自が、当時一世を風靡した在家の法華経教団である国柱会にあり、イーハトーブも満洲国もその目指したところは、宗教的な理想によるユートピアであると位置づけている。 これまで異なると思われていたものが実は本質はよく似ているという点は、面白い。しかし、で、それがどうしたとなると、急に論理が飛躍して「現代社会全体が、未来のビジョンを喪失して」おり、それに対して二人には「激しく抱いた理想に対し切ないまでに狂おしく突き進んでいくという、現代人が喪ってしまった情念を色濃く有している」と評価し、現代の私たちにも「新しい夢が必要だ」と結んでいる。 おいおいちょっと待てよ、童話はともかく、理想郷もとめてもう一回戦争やれとでもいうのかと言いたくなるのである。

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2014/03/14

どうやらベクトルの方向は異なっても同じ長さの理想郷があったようだ。これは明治期に生きた人間の理想郷とは違っていると直感的に思う。 本当に恥ずかしいことに、石原の最終戦争論は読めども後半の宗教論に入るところで本を閉じていた。そして、賢治の作品を読めども宗教と関連付けられた解説はそ...

どうやらベクトルの方向は異なっても同じ長さの理想郷があったようだ。これは明治期に生きた人間の理想郷とは違っていると直感的に思う。 本当に恥ずかしいことに、石原の最終戦争論は読めども後半の宗教論に入るところで本を閉じていた。そして、賢治の作品を読めども宗教と関連付けられた解説はそっと読み飛ばしていた。どちらもその著作と脈略が無いように思えたし、自分自身宗教に関心が無かったからだ。 それがこうして、二人の共通項として突きつけられたとき、久しぶりに自分の他人への興味と理解の浅さに辟易をしてしまった。 とにかく読めてよかったです。

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2010/06/21

激動の時代を理想社会の実現に向け、懸命に生きた2人の偉大な日本人を、国柱会という宗教団体の因果関係から読み解き、現代を生きる日本人の道標を提示した素晴らしい作品。 平和な時代をなんとなく過ごしている人は、刮目して読むべき。 (大東亜連盟の記述、満州国の記述のところで、小沢健二の祖...

激動の時代を理想社会の実現に向け、懸命に生きた2人の偉大な日本人を、国柱会という宗教団体の因果関係から読み解き、現代を生きる日本人の道標を提示した素晴らしい作品。 平和な時代をなんとなく過ごしている人は、刮目して読むべき。 (大東亜連盟の記述、満州国の記述のところで、小沢健二の祖父を発見!)

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2009/10/07

宮沢賢治の「雨ニモマケズ」が書かれている黒皮の手帳をガラス越しに見たことがある。感動したっけ。あの手帳のほかのページには曼荼羅や法華経が書かれており、創作メモ帳ではなく信仰の手帳であることをこの本で知った。 宮沢賢治と満洲事変の実質的な首謀者である石原莞爾。同時代に生きた詩人と軍...

宮沢賢治の「雨ニモマケズ」が書かれている黒皮の手帳をガラス越しに見たことがある。感動したっけ。あの手帳のほかのページには曼荼羅や法華経が書かれており、創作メモ帳ではなく信仰の手帳であることをこの本で知った。 宮沢賢治と満洲事変の実質的な首謀者である石原莞爾。同時代に生きた詩人と軍人が共に法華経を信奉し「イーハト-ブ」と「満州国」にその理想郷建設を夢見たと分析、二人が鎌倉期の激しい宗教活動家である日蓮の系譜につながると論ずる。戦後の新宗教と呼ばれる教団は創価学会、立正佼成会、霊友会と全て日蓮宗系であることなど、激動の時代には日蓮・法華経がその支柱となっているのは興味深い。時空を越えて、日蓮・田中智学(国柱会)・石原そして賢治を縦横無尽に語る力作。あの戦争で全てが新しい国家に生まれ変わったと思っている私たちだが、歴史や人物の生きざまを違う側面から覗くと、こんなにもわが父どころか祖父たち祖先たちの時代のあれこれを背負って生きていることを知る。

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