裁縫師 の商品レビュー
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世界、他者との感応を得てそこから更に独り静かで開けた孤独に沈んでいく人達の話が多かったように思う。 個人的には「空港」と「野ばら」が好き。 空港を旅に出る・帰る人々が立ち寄る場所としででなく帰って来る人を「待つ」場所としてとらえたのは面白かった。 ただ、世界との接触が心へ沈み込んでいくような描写がどれも似通ってるしくどい。細かいことを言えばやたら句読点も多くて気になった。
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きれいな文章の、孤独な話。 9歳のときに裁縫師と出会って、生涯独身の女性、母親に捨てられた小学生、女神と呼ばれる薬剤師に魅入られた男性。 裁縫師の服装の描写はとても好き。
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短編 家の近くにいた有名な裁縫師に洋服を作ってもらうことになった 幼かった私の、短い時の凝縮された淡い記憶。 静かな町に引っ越し、そこの薬剤師にひきよせられた思い。 叔父を空港に迎えにいった待つばかりの人生。 交通事故の後遺症故か、左腕がもげて現実か夢か定かではなくなった。 家出する父、仕事が忙しい母、しゃべらなくなった兄 一人分のお茶をいつもいれて飲む私、自由になるまでの期間。 まあ、普通)^o^(
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空気感のある短編集。 表題作の「裁縫師」が一番好きだった。いや実際にはそら犯罪だろうとかすかに思わないでもないのですが。 どの作品も、迷路にふと入り込んだような、目眩みたいな感覚があって面白い。 主人公たちはみんな孤独で自由。でも誰かとつながりたいと思うから、そこに物語がうまれる。 さびしくはないけど、なにやらひんやりする読後感でした。
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表題作のあらすじに惹かれて、ずっと読みたかった本。文庫化を待つつもりだったけど、短編集とは知らなかったから借りて来て正解だったかも。内容は期待通り、実際に読んでみてこの世界観には惚れた。
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短編集。 最初の「裁縫師」以外は、人によっては難解だと感じるかもしれない。 が、すべての短編に流れる独特の世界感が好き。 特に表題作「裁縫師」はとても好き。
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ちょっと気持ち悪かった。 キャッチコピー風に書けば性の逸楽のためにとある時空に閉じ込められた人たちのエピソード、みたいな感じだが、出産抜き子育て抜きの性交渉と過去の記憶だけの生活、というのはどうしても内側から腐った果物みたいに気持ち悪い。
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「裁縫師」仕立てられたワンピースの描写が好みだ。素敵。紺のジャンパースカート、太いひだのプリーツ、V字の襟ぐり、小さな襟とネクタイ。自分のからだに誂えられた服のしっくりさは少女の持つ個性を開花させた。ナボコフのロリータといわれるようなある種の少女は、生まれながらに「娼婦」の素質があるが、確信犯に仕立てられていく。そういう感覚を持って育つ女性は確かにいる。 「女神」鶴の恩返しと天女の羽衣伝説がモチーフみたい。冒頭の黄水仙の花弁と透き通るような羽衣と長い風きり羽根のイメージは見事にかさなって絵のようだ。
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高価な単行本は買うまいと心に誓っている。あっという間に文庫化されたりするといつもそう思う。 この短編集のことは、共通の本のレビューを書いたもの同士として知り合った方の新しいレビューで知った。共通の本とは小池昌代さんの前著『タタド』、その方の新しいレビューを見たのは昨夜だっ...
高価な単行本は買うまいと心に誓っている。あっという間に文庫化されたりするといつもそう思う。 この短編集のことは、共通の本のレビューを書いたもの同士として知り合った方の新しいレビューで知った。共通の本とは小池昌代さんの前著『タタド』、その方の新しいレビューを見たのは昨夜だった。 最初の2行を読んで、迷わずレジへ。いつもの誓いは反故にした。 あまりにも瑞々しい筆致に、もう続きを読みすすめば引き込まれてゆく予感が確かにあった。 それはともかく、角川書店さん、売りたいのはわかるけれど、「エロス」だの「9歳の女も感じるということを」だとか赤い文字で帯に入れるの止めてくれない。 下世話なキャッチコピーが不愉快な夾雑物の様に感じられるほどに、小川のなめらかな流れのごとく、物語は何の滞りも一切の抵抗感も感じさせずに流れてゆく。 私は文芸評論家でもないし、自分が物書きであるわけでもないから追求してみても意味はないのだけれども、この作家の文体のなめらかさは一体何処から来るのだろう。理由もわからずにいつも一緒に流されるかのごとく読みすすんでしまう。 表題作の『裁縫師』を読み終えたところで、不意に小学生だった頃のクラスメートを思い出した。確かいく子ちゃんという名前だったその子は、二年生のとき東京から転校してきて、あっという間に三年生のときまた東京へ帰っていった。 いく子ちゃんの上品で賢そうな立ち居振る舞いに私はいつもちょっと引いていた。私は田舎者だった(今でもそうか)。 こんな事もあった。なぜだか二人きりで神社の境内で遊んでいたとき、突然彼女が姿を消した。あれ、あれと思っているうちにまた姿を現し、私の耳元で囁いた。 「おしっこしていたの。誰にも言わないでね、恥ずかしいから」 世田谷あたりのコが話す綺麗な標準語、しかも聞き慣れない女の子のひそひそ声だった。 どきどきした。 やはり「良い」ですな。こういうの。 だから角川さん、「七歳の男子でも欲情する」って書くのと同じだよ、もう止めなさい。
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