子どもたちのいない世界 の商品レビュー
『灰色の魂』という小説を読んで以来、フィリップ・クローデルという作家に惹かれた。 暗い陰鬱な作品でありながら、魔性のような魅力がある小説だった。 次のフィリップ・クローデルの作品が、日仏同時発売され、私はまた彼の作品に触れることになる。 『リンさんの小さな子』は、『灰色の魂』...
『灰色の魂』という小説を読んで以来、フィリップ・クローデルという作家に惹かれた。 暗い陰鬱な作品でありながら、魔性のような魅力がある小説だった。 次のフィリップ・クローデルの作品が、日仏同時発売され、私はまた彼の作品に触れることになる。 『リンさんの小さな子』は、『灰色の魂』とは似ても似つかない色合いを持つ小説で、奥深い情感が湧きあがり、無意識に感動の領野が激しく反応した。 この小説で、フィリップ・クローデルには、ベトナム人のクレオフェちゃんという養女がいることを知る。 そして、クローデルは、心から強く彼女を愛してることもわかった。 『子どもたちのいない世界』は、その二冊に続く三冊目。 翻訳は、前作二冊と同じく高橋啓さん。 高橋さんも驚いたとあとがきに書かれているが、今回の作品は、またもや全作二冊とは趣きの違う、童話集のような本なのである。 童話だけではなく、詩篇あり、寓話あり、短篇のようなものもあり、子どもも大人も楽しめる構成になってはいるが、 冒頭の、 ---日々驚嘆させてくれるうちのプリンセスのために いずれは大人になる子どもたちのために そして、かつて子どもだった大人たちのために--- というクローデルの言葉が語るように、本書は、プリンセスこと、クレオフェちゃんのために書かれたものなのだろう。私たちはその御相伴にあずかってるような(笑) 『リンさんの小さな子』もクレオフェちゃんが将来この作品を読んでくれるために書かれたように感じた。 『子どもたちのいない世界』は、今、少女であるクレオフェちゃんに読んで貰うために書かれたのだと思う。 『子どもたちのいない世界』の20篇のなかに、「ザジのワクチン」という作品がある。 ひとを優しくするワクチンを作る女の子のはなし。 彼女が開発したワクチンは無料で世界中に配られ、戦争は終わり、裕福な人は貧しい人を助け、事件も抗争もなくなった。 11歳でこのワクチンを完成させ、ノーベル賞をとった。 その後、彼女は、学校に行くべきだと。なんて格好いい子どもなんだろう(笑)すごいことをやり遂げたあとに教育を受けに学校に通うのだから。 「五月はめぐる」というほのぼのとする詩もある。 訳者の高橋さんのあとがきによれば、フィリップ・クローデルは本格的な長編作品を用意しているという。 また、高橋さんの翻訳で読めそうだが、刊行を首を長くして待つことにしよう。
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http://www.haizara.net/~shimirin/blog/akiko/blosxom.cgi/book/20090829133847.htm
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悪くはない。 なんというか、ブラック・ユーモアに溢れている作品。 オトナが読めば、ああ、と感じるような毒々しさから、クスッと笑ってしまうような皮肉さまで。 何遍かにわかれているので、しかも物凄く短い作品まであるので読みやすい。
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いじめ、病気、戦争、差別現実世界の厳しい側面から目をそらすことなくかかれた一冊。世の中はそんなふうであるにもかかわらず生きるに値するのだ(蜂飼耳)
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不器用な妖精、悩み掃除人、皆を幸福にしてくれるワクチンを発明する女の子、などが登場する奇妙な味わいのある20の物語。
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どうかすべての子どもたちが、愛し愛されていると実感できますように。戦争に脅かされることなく平和な生活を送れますように。意に染まぬ労働を強いられることがありませんように。辛い時の避難場所が見つけられますように。病いの子も、世界の素晴らしさが感じられますように・・・・・ 少女のかば...
どうかすべての子どもたちが、愛し愛されていると実感できますように。戦争に脅かされることなく平和な生活を送れますように。意に染まぬ労働を強いられることがありませんように。辛い時の避難場所が見つけられますように。病いの子も、世界の素晴らしさが感じられますように・・・・・ 少女のかばんの中の文房具を擬人化して描いた「でぶのマルセル」のラストが、望ましい人生の終わり方をも示唆しているように思われて、一番心に残った。 ――Le Monde Sans Les Enfants et Autres Histories by Philippe Claudel
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不思議で、奇抜な20の物語がつまった一冊。 なんとなく違和感・・・でした。作者は、フランスの方。この違和感は、文化の違いによるものなのか?それとも、子どもの心を忘れないようにと思いつつも、すっかり忘れてしまっている大人の感覚のせいなのか? 何度も、この本と自分との間にある「壁」を...
不思議で、奇抜な20の物語がつまった一冊。 なんとなく違和感・・・でした。作者は、フランスの方。この違和感は、文化の違いによるものなのか?それとも、子どもの心を忘れないようにと思いつつも、すっかり忘れてしまっている大人の感覚のせいなのか? 何度も、この本と自分との間にある「壁」を意識して、悶々としてしまった。 (もしかしたら、子どもは、難なく受け入れてしまうのかもしれない) そういう意味においては、とても興味深い一冊でした。
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