自分探しの哲学 の商品レビュー
『愚か者の哲学』(主婦の友社)の改題版です。 「愚か者」とは、ニーチェの『ツァラトゥストラ』に登場する人物で、ツァラトゥストラの口真似をして、世間の人びとに対して批判的なことばを投げつけることをくり返している人物を指しています。この愚か者に対して、ツァラトゥストラは彼の振る舞い...
『愚か者の哲学』(主婦の友社)の改題版です。 「愚か者」とは、ニーチェの『ツァラトゥストラ』に登場する人物で、ツァラトゥストラの口真似をして、世間の人びとに対して批判的なことばを投げつけることをくり返している人物を指しています。この愚か者に対して、ツァラトゥストラは彼の振る舞いの背後にルサンチマンが控えていることを見抜き、「愛せない場合は、通り過ぎよ」ということばを与えます。それは、愚か者がそうした振る舞いをつづけることで、ますます世間に対するルサンチマンにとららわれていくことになり、みずからの生をスポイルすることになるということを意味していると著者は解説します。 ひとは何らかの「物語」を通して世界と自己を了解しており、そこから生きることの喜びを得ることができます。ところが、ときにひとは『ツァラトゥストラ』に登場する愚か者のように、けっして自分自身を幸福にしない物語にとらわれてしまい、そのことで自分自身を生きることの喜びから疎外してしまうことがあります。本書は、そうした世界と自己のつながり方を解き明かし、「物語」を通じた自己と他者との関係のルールを編み変えることのうちにエロスを見いだすことへと読者を導いています。 『「自分」を生きるための思想入門』(ちくま文庫)とやや重なる内容ですが、本書の方がよりわかりやすいことばで書かれています。竹田現象学が単なる机上の学問ではなく、一人ひとりがよりよく生きるためのツールであることを、よく示している本ではないかと思います。
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実存主義哲学による人生論。引用文献が豊富。竹田先生といえば現象学だが、最近はそれに限らず幅広い思想家、文学者などにも精通している。ただ相変わらず現代思想、ポストモダンについては辛口。そろそろこういった考え方とも和解して、双方融合した思想も聞いてみたいのだが、著者の現代思想批判は...
実存主義哲学による人生論。引用文献が豊富。竹田先生といえば現象学だが、最近はそれに限らず幅広い思想家、文学者などにも精通している。ただ相変わらず現代思想、ポストモダンについては辛口。そろそろこういった考え方とも和解して、双方融合した思想も聞いてみたいのだが、著者の現代思想批判は、かなり対象文献を読み込んだうえでのものなのか、それなりの強い説得力を持つ。その結果として、近代哲学やギリシャ哲学の復権には多大な貢献をしているのだろう。その具体的な適用例を「生き方」という人間であればほとんどの人が興味を持つ分野で示していることは非常に意義あることと思う。
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哲学入門書として出色の作品。 哲学者ではなく"読者の人生"にスタンスを置かれているのが斬新で、これこそ本来あるべき形でしょう。 「子ども」「若者」「大人」それぞれのステージにおける悩みの本質を哲学者達が鋭く言語化し、著者が解説します。 見て見て!な幼年期、俺様...
哲学入門書として出色の作品。 哲学者ではなく"読者の人生"にスタンスを置かれているのが斬新で、これこそ本来あるべき形でしょう。 「子ども」「若者」「大人」それぞれのステージにおける悩みの本質を哲学者達が鋭く言語化し、著者が解説します。 見て見て!な幼年期、俺様気分の中学時代、手痛い失恋で停滞諦観時々「ほんとうの自分」探しで現実逃避しどんより大人に。なぜこうなった?これでいいのか? アウレリウスは問う。「この世において汝の肉体が力尽きぬのに、魂が先に力尽きるのは恥ずべきことではないか」と。
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なかなか読み応えがありました。難解な哲学の思想を日常生活と照らし合わせて、大変分かりやすく解説してくれてます。 自分の人生を客観的に見てみるのも楽しいもんです。
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