ナンバー9ドリーム の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
何かの折にハードカバーで購入し、そのままずっと10年以上、本棚の隅に放置していた本。長いこと手を出さなかった理由はただ一つ、分厚い。最終章まで550ページある。「さぁ読むぞ」という気合がないと、なかなか1ページ目を繰ることができない。 厚さそのものから言えば京極夏彦ほどではないが、京極夏彦は「妖怪」という確たるテーマがあり、そのうえ会話のやり取りで展開する場所が多いので、読んでてそこまで負荷は感じない。 一方で、この作品は9章それぞれに違うストーリーが展開していて、ごく普通(に見える)小説もあればSFのような話もあり、急にミステリになったかと思えば、数章前のミステリ調のストーリーの時に出てきた登場人物を使って今度は暴力と殺人をテーマにした章が始まる、という感じで、ストーリーとしての一貫性がない。ただ、読み終えてみると「この一貫性の無さが、この著者の強みであり、この著者がこの作品で出したかったストーリーなんだな」というのが分かる。 なので、端的に言うと「小説家が縦横無尽に張り巡らした妄想と言葉遊びによる混沌とした作品世界」を楽しみたい、そういうジャンルの作品を楽しめる、という人には向いているし、そういう雲を掴むような架空の中の虚構の世界を読んでると頭が痛くなる、という人は読まない方がいい、という作品。自分は後者なので、この本は合わなかった。
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詠爾は島を出た。東京の混沌に、まだ見ぬ父を探すため。新宿の高層ビル群に惑い、たぐり寄せては切れる細い糸に絶望し、ふとした出会いに心ときめかせる―。饒舌にして錯綜した彼の語りの果てに明かされるのは双子の姉の死、心を病む母の存在。果たして詠爾は、父と巡りあえるのか?イギリス若手作家ベ...
詠爾は島を出た。東京の混沌に、まだ見ぬ父を探すため。新宿の高層ビル群に惑い、たぐり寄せては切れる細い糸に絶望し、ふとした出会いに心ときめかせる―。饒舌にして錯綜した彼の語りの果てに明かされるのは双子の姉の死、心を病む母の存在。果たして詠爾は、父と巡りあえるのか?イギリス若手作家ベスト20選出、ブッカー賞連続最終候補の気鋭が放つ、疾走と裏切り、思慕と夢幻の物語。哀切なるこの世界に捧げる鎮魂の歌。
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図書館で。 面白くないわけではなさそうなんだけど… ものすごい時間があるときに、ゆっくり贅沢に読みたい感じのお話だな~と思いました。一回に数ページとかそういう速度で。
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ハルキ・ムラカミのオマージュ的作品らしいが、感じることが出来なかった。 むしろドラゴンっぽい荒々しさ。読み方が悪いのか。 というか、訳者の方が比較に出されてる「ノルウェイの森」の記憶が薄い…。 久しぶりに読み返すべきか。あまり好きくないのやけど。 そして裏表紙には「ねじまき鳥クロ...
ハルキ・ムラカミのオマージュ的作品らしいが、感じることが出来なかった。 むしろドラゴンっぽい荒々しさ。読み方が悪いのか。 というか、訳者の方が比較に出されてる「ノルウェイの森」の記憶が薄い…。 久しぶりに読み返すべきか。あまり好きくないのやけど。 そして裏表紙には「ねじまき鳥クロニクル」の文字が。そっちは好き。 そもそも「クラウド・アトラス」が読みたいのだった。
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とりあえず構造が凝ってて楽しい。本筋とは別の筋が交互に挿入されてて、9つに分かれた章がそれぞれ別の物語とクロスしてる。妄想、過去、仮想現実、夢などなどバラエティー豊かなお話が、本筋から違和感なく突入していったりするので、たまに騙されたりしつつも、次はどんな感じで来るのかが楽しみに...
とりあえず構造が凝ってて楽しい。本筋とは別の筋が交互に挿入されてて、9つに分かれた章がそれぞれ別の物語とクロスしてる。妄想、過去、仮想現実、夢などなどバラエティー豊かなお話が、本筋から違和感なく突入していったりするので、たまに騙されたりしつつも、次はどんな感じで来るのかが楽しみになったりする。 もう一つ特徴的なのが、文が短いこと。短い文で情景と心情を交えつつテンポ良く語られてるので、ぐいぐい読めてずんずん引き込まれる。引き込まれたあげくに物語的には何も進まなかったりするけど、残りのページはどんどん減ってく。舞台が日本なので情景を理解しやすいってのもある。 そんなスタイリッシュな形式の中で語られるのは、父ちゃん探しっていう凄くシンプルな話。目的はシンプルだけど、あまりにも普通じゃない難問が次々と襲いかかってきたりして、あまりにも普通ので頼りない少年が、それをほとんど偶然に乗りこえていったりする。 世の中、複雑なように見えて実はシンプルで、何かいろいろ大変だったりするけど最終的に何とかなるじゃんって感じ。最後の章だけはちょっと何とかならないかもだけど。色んな意味で。
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見かけたら皆さん即買いレベルの厨2病的な怪書。 カズオ・イシグロと村上春樹とハーラン・エリスンを捏ねて固めたらこんなんなりました的な感じ。
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久しぶりに改行の無いページがある本を読みました。 最近ライトノベルが続いていたので 刺激が強すぎました。
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長い。途中でへたれそうになる。 “「親探し」に謎めいた暴力、広がり続ける神話的デジタル宇宙・・・・あらゆるタイプの物語とエピソードの断片が炸裂する・・・(裏表紙より)” なんと感想を書いていいのやら。 とにかく、すごくギラギラとしてインパクトの強い作品。
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分厚い。 結局、何がいいたかったのかが微妙に理解しきることができなかった。 でも、それはそれで良い。 小説の世界にはちゃんと引き込んでくれたから。 小説の冒頭の部分は動きが小さくてそんなに面白くないが、 途中から、何となく、面白くなった。 父を探している主人公の少年は、 村上春...
分厚い。 結局、何がいいたかったのかが微妙に理解しきることができなかった。 でも、それはそれで良い。 小説の世界にはちゃんと引き込んでくれたから。 小説の冒頭の部分は動きが小さくてそんなに面白くないが、 途中から、何となく、面白くなった。 父を探している主人公の少年は、 村上春樹の小説によく出てくる若者のパーソナリティーと 重なる部分が大きい。 著者自身も、この小説を村上春樹とジョン・レノンへのオマージュとしている。 日本の東京を舞台に、英国人の書いた村上春樹的冒険小説がいまここに。 ・・・という感じ。
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デジャヴ。それも悪夢の。 入り口で来る者を選択するかのように繰り返される夢と現の入れ子のような構造。読み手である自分は中々入り込めないその出だしに少し苛立つ。そして本の厚さを見やって先行きが大いに不安になる。日本語への移し替えに過ぎたところがあるのではないか、という思いが脳裏...
デジャヴ。それも悪夢の。 入り口で来る者を選択するかのように繰り返される夢と現の入れ子のような構造。読み手である自分は中々入り込めないその出だしに少し苛立つ。そして本の厚さを見やって先行きが大いに不安になる。日本語への移し替えに過ぎたところがあるのではないか、という思いが脳裏をよぎる。その雑念によって、自分の気持ちは更に醒めたような状態となる。 しかし正直に言えば、外国人による小説とは思えない程、日本を舞台にしていることに違和感がない。まるで日本の若い作家が描く現代日本を描いた本を読んでいるかのような気分に、徐々になってくる。そしてそのような雑念から脱する頃から急に坂道を転がり出すように物語は加速し始める。 不規則に挿入される夢物語。その不安定なリズムが何時の間にか体に染み込む。そしてその染み込んだリズムが最後に向かって、更に加速され、増幅され、一気になだれ込んで行くのを止めることができない。その先にある最終章。息を呑む。 見事な放り出し。全休符。 読み手である自分は息を止めて最後の直線を走っていたことを忘れ、しばし呆然となる。そして、酸欠の水中の魚が酸素を求めて水面に急ぐように、急に我に帰り、大きく息をつく。 あとがきにあるように、これは英語で書かれた日本語の小説であるといってよいと思う。訳文を訳文であると意識することなく読むことが、本書を楽しむ前提であるのかも知れない。
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