ほたる館物語(1) の商品レビュー
湯里温泉老舗旅館のひとり娘一子、小学5年生が主人公の児童書のシリーズ第1巻。けど「子どもの本」然とはしていない。一子は、大人の事情をよくわかって自分の役割も弁(わきま)えている。旅館の裏側の仕事も丁寧に描写する。その上で子どもの世界をリアルに描く。それもそのはず、あの「あさのあつ...
湯里温泉老舗旅館のひとり娘一子、小学5年生が主人公の児童書のシリーズ第1巻。けど「子どもの本」然とはしていない。一子は、大人の事情をよくわかって自分の役割も弁(わきま)えている。旅館の裏側の仕事も丁寧に描写する。その上で子どもの世界をリアルに描く。それもそのはず、あの「あさのあつこ」の児童書なのである。「バッテリー」同様、大人には媚びないのである。 舞台はバリバリの関西弁なので大阪なのはすぐ判明するけれども、それ以外の設定は「湯里」の命名からして、岡山県湯郷町に住んでいる自分の故郷をモデルにしているのは明らか。表紙にあるように、山あいに1本大きな川が流れて、静かな温泉宿で最近大型ホテルが進出してお客さんを大量に取られて大変なことになっている旅館のお話である。一昨年泊まったけど、まんま湯郷町。 昨年、あさのあつこさんの講演を聴いた。それに触発されて「ぼくがきみを殺すまで」を読んだ。講演の話題は勿論それだけではなく、彼女は自分がデビューする迄を話してくれた。わたしの文責で、その話を紹介する。 子供時代、外で遊び回っていました。今考えれば、五感をフルに感じる下地作りをしていたんですね。子供時代、人の息吹が身近にありました。例えば、六年生の頃に「家出ごっこ」が流行って、お店をやっていたおばあちゃん所へ行っていっぱいおにぎり炊いてもらって、みんな置き手紙を書いて、山や川へ行って、遊んで帰る。ということをやっていました。 大学は青山学院文学部に行きました。その時故郷を外から見たのです。18か19だったので、落差が大きくて、山手線は、次の駅まで間隔すぐなのに、どうして走るんだろ?とか、いろいろカルチャーショックでした。そんなに煌(きら)びやかな世界ではありませんでした。 ただ一つ書くことだけが好きでした。書くことに縋(すが)るしかできなかったともいえます。大学でも何かやりたかった。海外ミステリがとても好きで、ミステリ研究会に入るつもりだったけど、あまりにも逞(たくまし)さに、児童文学研究会にたまたま行って、4年間児童文学に触りました。卒業あと、就職氷河期で東京で就職できず、岡山県岡山市で教職に就きました。 3年間忙しかった。自分に言い訳して「書かなくていいか」とは思ってしまった。その時、受け持っていた生徒の小3の女の子から「わたし、尾川先生、いい加減じゃから嫌い」と言われたのです。腰掛け気分を見抜かれた。じゃ改めて自分にどうするのか、問いかけてみた。私は書く人になりたいと思ったのです。運命的に旦那と巡り会って、湯郷町に帰りました。旦那に稼いでもらって、書く時間が取れる、最終的に書くことを選びました。人が人を変えることはある。子供が大人を変えてゆくことはいっぱいあるのです。 男の子2人は年子で3年離れてもう1人子供が生まれました。書く暇はなかなかない。質より量をとった。ちょうど書店で時代小説文庫フェアがあって、夜の時間はあったので、藤沢周平の「橋ものがたり」を読みました。短編集ならば途中切れても良い。初めて藤沢周平読んで、引き込まれてしまって、ここに私がいる、と思ってしまいました。橋の上で一目惚れする職人のこと、最後のどんでん返しでくらっと世界が変わる。遊女や職人、商人とかが自分につながっている。私もこんなふうに物語を書きたかったんだと思いました。 大学時代先輩の同人誌の後藤竜ニさんから、声かけてくださいました。それがレビューのきっかけになった「ほたる館物語」です。 そうなんです。本書は、あさのあつこデビュー作です。37歳、比較的遅いデビューは、こういう事情があったようです。でも、最初から文章は躍動しています。完成されてもいます。薄い文庫本ですが、もうギュッと詰まっています。子供時代五感を鍛え、都会も経験し、ミステリや時代小説の良いところ取りもして、教師時代の経験も、温泉宿の事情も熟知した、出るべくして出た一冊になっています。 (1)には2篇の短編が入っています。あさのあつこさんの藤沢周平好きは知っていたんですが、「橋ものがたり」にそこまで思い入れがあるとは知りませんでした。このシリーズには、短編の妙味があると思います。ずっと読みたかったのですが、今年3月の一箱古本市で見つけました。全4冊。一気にレビューしたい。
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30年前の本。全然古くない。デビュー作とか嘘やろ、と言いたくなるくらい文章が生きている。YAじゃない児童文学、という説明にも納得。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
【あらすじ】 温泉町にある老舗旅館「ほたる館」の孫娘・一子は、物怖じしないはっきりとした性格の小学五年生。昔ながらの旅館に集う個性豊かな人々や親友の雪美ちゃんに囲まれ、さまざまな経験を重ね少しずつ成長していく。家族や友達を思いやり、ときには反発しながらも、まっすぐに向き合っていく少女たちの純粋さが眩しい物語2編を収録。著者デビュー作シリーズ第一弾。 【感想】
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3巻まで読んで、何が面白い!? ってはたと思う。 ちょっと物足りない気がする。 けど、何か読み続けたくなる… なんかフシギ。
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主人公は強くてしっかり者で、優しい女の子。 家は老舗旅館。 なんだかほっとする。 こんな旅館に泊まってみたい。 で、蛍を見たい。 いいなぁ…。 するりと読めてしまうけど、後からじんわり温かい気持ちになれる物語。
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一子はほたる館の子供で毎日のように手伝わされている子です。お客さんはあまり多くないけれど、それでも昔からの習慣のままでほたる館を続けて一生懸命頑張っているという話です。この話を読むとどんなに大変でもしっかり一生懸命やっていかないといけないと思います。大変だけど楽しく、笑顔で続けて...
一子はほたる館の子供で毎日のように手伝わされている子です。お客さんはあまり多くないけれど、それでも昔からの習慣のままでほたる館を続けて一生懸命頑張っているという話です。この話を読むとどんなに大変でもしっかり一生懸命やっていかないといけないと思います。大変だけど楽しく、笑顔で続けていくことが大切なんだと気付かされました。毎日ほたる館ではどんなことをやっているかとか一子ががんばっている所がよくわかりました。
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あさのあつこらしさが凄く出てる!!デビュー作とは思えない。 読んでいてほのぼのします。方言が素敵。
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主人公の、 短気でまっすぐでチョット荒くて一生懸命な性格が好き☆ そして、おばあちゃんがまた素晴らしい!名言が多い〜☆★
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バッテリーのあさのあつこデビュー作。 そのうち、2巻、3巻も紹介しようと思いつつ、まだ実行できていないorz http://yaplog.jp/dokusho-kannso/archive/2 にて感想あります。 コピペか、プロフィールのURLからお願いします。
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あさのあつこさんのデビュー作品ということで読んでみました。 デビュー作品とは思えないほどの完成度で、ほのぼのとした話でした。
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