ラスト・ブレス の商品レビュー

ピータースターク【著】,徳川家広【訳】

2009/10/04

これは、すごいです！
超一流ノンフィクションライターが、その知識と才能をふんだんに使って、
「人が死にゆく時間」を描いた短編集。
墜落死、凍死、クラゲ毒、脱水症状、マラリア……などのテーマを、
ドラマ仕立てで語っています。
各章の登場人物のドラマとともに、死にゆく人体のメカニズムが同時進行で
語られるという新鮮なつくり。さしはさまれる、病と人類の歴史のうんちくも深い。
フィクションという体裁をとっていますが、
身体的な事実は科学的に証明されたリアルなもの。
自然界のなかで、人が快適に生きられる範囲のなんと狭いことか。
スリリングで上質な筆致を息をのんで鑑賞しながら、
自分のすぐとなりにあるだろう死の影にゾクリと背筋が震えました。
これは私の上半期ベストブックに間違いなく入る１冊です。