聖母の贈り物 の商品レビュー
12篇からなる短篇集。長編小説を読んだ後のような、ずっしりとした満足感。「トリッジ」の辛らつさに、登場人物とともに驚き、「こわれた家庭」では、静かな生活が突然暴力的にかき乱されるミセス・モールビーにやきもきし、表題作のラストでは、何故か涙がこぼれ・・・。どの作品も細やかで、静かな...
12篇からなる短篇集。長編小説を読んだ後のような、ずっしりとした満足感。「トリッジ」の辛らつさに、登場人物とともに驚き、「こわれた家庭」では、静かな生活が突然暴力的にかき乱されるミセス・モールビーにやきもきし、表題作のラストでは、何故か涙がこぼれ・・・。どの作品も細やかで、静かな語り口で。しみじみと孤独で。 ――Selected Short Stories by William Trevor
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収録作の中で圧巻なのが、中篇といってもいい「マティルダのイングランド」。この小説は、戦場の出てこない戦争小説でもあり、そして幽霊の出てこない「亡霊」の物語。凄みがあります。
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初めて読んだけれど全て面白かった。生きてそばにあって変わるものよりも、死んだ人や、土地、家と一方的な会話をしたり勝手に支配されたりするのが好きそうなマゾっぽい人たちが主に主人公になっている。短編の並べ方も上手。最初の数編を読むと底意地悪くて巧みな、と思ったが、読み進めるに従っても...
初めて読んだけれど全て面白かった。生きてそばにあって変わるものよりも、死んだ人や、土地、家と一方的な会話をしたり勝手に支配されたりするのが好きそうなマゾっぽい人たちが主に主人公になっている。短編の並べ方も上手。最初の数編を読むと底意地悪くて巧みな、と思ったが、読み進めるに従ってもっと楽天的でシンプルなところもある作家なのだということが分かるように構成されているようだった。個人的には『マティルダのイングランド』の場所に対する不健全な執着心が『丘を耕す独り身の男たち』では崇高な感じに描かれているところとかが印象的だった。どんな彫刻を作っていたのか。
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