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ヴァーツラフ・ニジンスキーは、120年前の1890年3月12日にロシアで生まれて60年前の1950年に60歳で亡くなったバレエダンサー・振付師。 パリの有力紙に、ニジンスキーの再来と絶賛された弓村高という舞踏家、二人には奇妙に合致するものがあり・・・という赤江瀑の短編集『ニジン...
ヴァーツラフ・ニジンスキーは、120年前の1890年3月12日にロシアで生まれて60年前の1950年に60歳で亡くなったバレエダンサー・振付師。 パリの有力紙に、ニジンスキーの再来と絶賛された弓村高という舞踏家、二人には奇妙に合致するものがあり・・・という赤江瀑の短編集『ニジンスキーの手』を読んでからなのか、それとも我が敬愛する暗黒舞踏の土方巽の著作に触れてからなのか、もう今となってはニジンスキーとの出会いがいつだったのか謎のままです。 それほど大昔というのでもないのに、彼の動く映像がひとつも残されていないのもまた不思議なことですが、だからこそ、より伝説化し、より神格化し、いやがおうでも彼の名声は上がる一方です。 「空を飛んだまま戻ってこなくて、客が忘れた頃に降りてきた」といわしめるほどの究極の跳躍力、自由奔放に狂喜乱舞する獣のような圧倒的な迫力、にもかかわらず両性具有のような艶めかしい存在感、知れば知るほど益々その魅力の虜になっていきそうで、怖い、ああ、とても怖い。まんじゅうじゃなくて、ニジンスキー怖い。 この本は、『シェエラザード』や『薔薇の精』『牧神の午後』など、彼の踊った9つの作品の美しい舞台写真やパリ・オペラ座のプログラムの復刻、画家の描いた舞台画や関連した人たちの来歴やエッセイなど盛り沢山のビジュアル本です。 バレエということで熊川哲也のインタビューも入っていて、タイムマシンがあったら時空を超えて踊り比べをしてみたい、と語っていますが、私だって、ふたりで一緒に踊ってみたーい、と言いたいです。 あっダメか、私はバレーボールしかやったことがなく、踊るとしたら舞踏の方です、なにしろ偏平足なのでトゥシューズが履けません(?)。 それにしても、同性愛の関係だった興行師ディアギレフと出会って主宰するロシア・バレエ団=バレエ・リュスの看板スターとして活躍したのもわずか10年でしかなく、神の贈り物、とまで自任していたはずの彼も、28歳のとき精神疾患を患ったあと、その後は精神病院をたらい回しされる人生を送ったというから、世紀のバレエダンサーの栄光の輝きの影に隠れたこの事実には、なんともやり切れない悲劇性を感じてしまいます。 でも、彼の晴れやかに踊る神々しい姿は、何ものにも代えがたいこの上なく美しい心が洗われるものです。きっと彼は、後半生の苦痛の日々、かつての至福の瞬間を回想して、悦楽の境地にいたのに違いありません。
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