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新しい「公共」をつくる の商品レビュー

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2009/10/20

徳島大教授で地域経済論を専門としている著者が、徳島の自治体で展開されてきた住民参加の事例紹介を通じて、住民自治の新しいかたちを提示している。 著者は本書が明らかにするべき課題として3つを挙げている。 ①近年の自由主義的風潮の中で、政府が公共領域から撤退している現実が国民...

徳島大教授で地域経済論を専門としている著者が、徳島の自治体で展開されてきた住民参加の事例紹介を通じて、住民自治の新しいかたちを提示している。 著者は本書が明らかにするべき課題として3つを挙げている。 ①近年の自由主義的風潮の中で、政府が公共領域から撤退している現実が国民にとって望ましくないものであるという立場から、近年の構造変化の構図を明らかにする。 ②政府が撤退し空洞化した公共領域の再構築に対して個人や企業が役割を果たしうることを明らかにする。 ③そうした意味から「参加型地域づくり」が持つ現代的な意味と可能性を検討すること、 である。 基本的には新自由主義への批判がなされ、その対極のモデルとして「参加型地域づくり」が提示されるというロジック構成。 本書で筆者が言う「参加」は政策実施段階よりも政策決定過程への参加であることが明示されており、幾つか挙げられている事例における共通点からその民主的な「参加」の条件をまとめている点は良かった。 ただ、いずれも公共事業に関する事例である。いくら情報や審議過程を公開しても委員の選出など知事のリーダーシップに依存せざるを得ない部分が多いように感じた。 また、新自由主義への批判として福祉など公益性の高い分野を民間が担うことの限界性を指摘していたが、筆者の「参加型地域」がこの限界を超えられるのかという点についても疑問が残る。 ただ、80ページ程度の文量では物足りなさも仕方がないか。

Posted byブクログ