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戦略爆撃の思想 の商品レビュー

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2009/10/07

 世界的にみて、都市爆撃は本来軍事施設に向けられるものであったが、その一つの転回点となったのが、日本軍による、抗日首都重慶に対するしつような無差別爆撃であった。今日その悲惨さは、アメリカの日本への爆撃や広島、長崎への原爆投下の陰に隠れてしまっている感があるが、実は、日本はアメリカ...

 世界的にみて、都市爆撃は本来軍事施設に向けられるものであったが、その一つの転回点となったのが、日本軍による、抗日首都重慶に対するしつような無差別爆撃であった。今日その悲惨さは、アメリカの日本への爆撃や広島、長崎への原爆投下の陰に隠れてしまっている感があるが、実は、日本はアメリカに対し、模範を示してしまったのである。そしてそれは今日の戦争にまで続いていることを著者は指摘する。もちろん、そこにドイツに対しては軍事目標以外の爆撃もしなかったし、原爆も落とさなかったというアメリカのアジア人蔑視があるにしてもである。  本書は、重慶から広島につながる無差別爆撃の系譜を豊富な資料によって跡づけただけでなく、爆撃下の重慶にあって、明るくそれを跳ね返そうとする一般大衆、エスペランティスト長谷川テル、蒋介石、周恩来、怒りに燃えながら文学活動をした郭沫若、老舎、茅盾、エドガワ・スノー、スメドレーたちの声、活動を活写する。本書が記録読み物としてだけでなく、読み物としてもすぐれたものになっているのは、筆者が軍事史研究家でもありとともにジャーナリストでもあるからだろう。

Posted byブクログ