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フッサールの脱現実化的現実化 の商品レビュー

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2022/02/20

前著である『フッサールの現象学的還元―1980年代から『イデーンI』まで』(2003年、晃洋書房)の姉妹編で、前著において論じられた「脱現実化的現実化」というテーマにそって、あらためて前期から中期のフッサールの議論をたどり、その哲学的な意義を考察しています。 本書の「序言」で、...

前著である『フッサールの現象学的還元―1980年代から『イデーンI』まで』(2003年、晃洋書房)の姉妹編で、前著において論じられた「脱現実化的現実化」というテーマにそって、あらためて前期から中期のフッサールの議論をたどり、その哲学的な意義を考察しています。 本書の「序言」で、タイトルに含まれている「脱現実化的現実化」ということばが、フェルディナント・フェルマンおよびゲオルグ・ミッシュの用法を受け継いで、「実在的現実を脱却することによって真の現実を捉えるという現象学的還元の目的」に対して、このことばが用いられていると述べられています。現象学的還元とは、自然的態度における世界定立に対して「判断中止」(エポケー)をおこない、純粋意識の領野を確保することを意味しています。本書では、とりわけ「中立化」をめぐるフッサールの議論の推移をていねいに追いかけることで、フッサールの現象学において「脱現実化」が果たされることになる経緯を明らかにしています。 前著では、「現象学的還元」の思想形成のプロセスをたどりつつ、「脱現実化」という概念の具体的な内実が論じられていましたが、本書では前著の議論を前提にしつつ、その周辺の諸問題がとりあげられています。そのため、本書の議論を理解するためには、前著を読んでいることが前提とされており、読者によっては説明が不親切に感じられるかもしれません。著者のフッサール解釈の基本的な枠組みは、すでに前著で明らかにされていることもあって、あまり目新しい内容はなかったように思います。

Posted byブクログ