草にすわる の商品レビュー
表題作に加え、「砂の城」「花束」の三篇を収録。 「草にすわる」「砂の城」は同じテーマを描いているが、その内容は全く異なっており、特に後者は作家を主人公にした老人であり、内容もどこかメタ的で、文学について対談する過去を思い返す場面なんかはそのまま作者の考えなのかな、とか、具体的に明...
表題作に加え、「砂の城」「花束」の三篇を収録。 「草にすわる」「砂の城」は同じテーマを描いているが、その内容は全く異なっており、特に後者は作家を主人公にした老人であり、内容もどこかメタ的で、文学について対談する過去を思い返す場面なんかはそのまま作者の考えなのかな、とか、具体的に明言しているわけではないがノーベル文学賞について触れ、20年近く日本では受賞者がおらずとあり、「砂の城」が書かれたのが1994年であることなど、そわそわする面白さがあった。 「花束」は瀧口明名義の頃に出版された事実上作者の処女作ということで興味があったが、まさか政治・経済小説とは思わなかった。あとがきによると93年の末に書かれたそうだが、調べてみると、99年の末に「第一勧銀巨額不良債権を暴く」という記事が文藝春秋に載り問題になったというのは、作者は実際に当時この雑誌に携わっていただろうというのも含めて、一体どういう因果なのだろうかと思ってしまった。 個人的にはこの作者には、自己を見つめ考えを巡らせるような文学的な方向が似合っていると思う。
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表題作、草に座るが良かった。何がきっかけというわけではなく、小さな事柄が重なり生きていくという事への本質的な意味を見失ってしまう。仕事をすること、誰かに何かを与えることで生きていけること。そんな、人と人の繋がりの中に存在する新たな意味に気付かされる一冊。
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一瞬の光よりさらに生きる事についてこだわった内容。 僕はこちらの方が好き。 残りの短編は企業ものでこういうものも書いてたんだと言う感じです。
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表題含め3作からなる短編集。今時よくあるような、ブラック企業を辞めた若者が主人公である「草にすわる」。主人公が、存在・生きていることこそがかけがえのない全てであることに気づきまた一歩を踏み出す様子が書かれている。一度、死のうと思うと感じるのであろうその感覚は読んだだけではちょっと...
表題含め3作からなる短編集。今時よくあるような、ブラック企業を辞めた若者が主人公である「草にすわる」。主人公が、存在・生きていることこそがかけがえのない全てであることに気づきまた一歩を踏み出す様子が書かれている。一度、死のうと思うと感じるのであろうその感覚は読んだだけではちょっと味わうとこまではいかず。個人的には一番古い作品らしい3作目の「花束」が半沢直樹ちっくでおもしろかった。映像化しやすそう。筆者のあとがきを読んでから初めて、ああそういうことがいいたかったのかとわかることが多かった。ということは今の私には感覚的に添わなかったのかも。
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子どもがいる世帯には、おなじみのフレーズではないだろうか。 <わたしのまちがいだった> そうです、奥さん。見るとはなしに、流れていて、かつ耳に残る、名フレーズ。にほんごであそぼです。八木重吉。 砂の器より、この表題作のほうが好きだった。 この人の作品は日常や私の生活とは遠くて、それでいて人生の息苦しさが、切ないほどつまっているところが すき。
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初期の作品なんですね。白石さんの作品はとても文学的です。それ故に疲れる時もありますが、良くも悪くも引きずられる作品でした。 短編1作目は自殺未遂したり、どうしようもない喪失感がつらいけど最後はいい感じでした。 2作目は小説家の話。奥さんの精神科の描写など、リアルで家族ってつらいな...
初期の作品なんですね。白石さんの作品はとても文学的です。それ故に疲れる時もありますが、良くも悪くも引きずられる作品でした。 短編1作目は自殺未遂したり、どうしようもない喪失感がつらいけど最後はいい感じでした。 2作目は小説家の話。奥さんの精神科の描写など、リアルで家族ってつらいなと思いました。 精神的な不安定さや焦り、共感できる部分がたくさんありました。 ただそれだけにやはりつらい、って感じも残りました。
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白石一文は短編より長編の方が重みがあってすきだなと思ってたけど、短編もよかった。 初期の3作品。それぞれ毛色が違うけど、主張がストレートに伝わってきてとてもよかった。 特に表題作「草にすわる」がお気に入り。 雰囲気は少し白石一文らしくないかな?とも思ったけど 最近の長編のような回りくどさはなくて、素直でまっすぐな展開にすこしどきどきした。 文面が固いからかやたらと政治的な思想を盛り込むからかお堅い作家だと思われがちだけど、言ってることはとても純粋なことだと思う。 挫折した人間が、生死の狭間で生きることを放棄しようとした人間が、人との関わりを経て再生する物語。 初盤の「いっそ他人の血でも吸わないことには生きられない体質でもあってくれれば、こんな自分ももっとまともな生き方ができるかもしれないのに」 から ラストの「もう自分は一人で歩けなくてもいいのかもしれない、と不意に感じた」 の流れがわかりやすくてよかった。 そして大好きな八木重吉の詩が引用されていたのが印象的だった。 三本目の「花束」はお得意の?社会モノ。金融と政治とジャーナリズムの話。 政治経済モノの話は得意でないけど、白石一文の書く話は芯がしっかりしていて読みやすい。 知識が豊富で語り口も明快だから、一度ずぶずぶの社会モノを書いてみてほしい、と実はずっと思っている。エンターテイメント要素満載の大衆小説的な。 白石一文らしいかは別にしてきっと面白いと思う。 そしてあとがきがよかった。 社会での成功と、個としての精神的な成長は別物だ。 「世界や社会のために私があるのではなく、私のためにこの世界も社会もある。 この単純な真実を、私たちは果たしてどこまで本気で信じ切れているだろうか?」 人が皆自分の心を生きようとしない限りは、社会からいかなる非道も残虐も差別もなくなりはしないだろう。
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生きていくということを強く印象付ける作品。 三編あるが、どれも衝撃的な部分がある。 表題作「草にすわる」は、あとがきによると、作者が初めて食べるために書いた作品だという。 それを知ると、また別の感想が浮かんでくるような気がする。 2013.6.16
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「僕の中の壊れていない部分」が有名な白石一文の短篇集です。タイトルとなっている「草にすわる」は、ハードな仕事に疲れ、仕事を辞め実家でダラダラと過ごしている青年の話です。閉塞感を感じながらもその生活から抜け出せない青年が何となく付き合っている彼女から同じような閉塞感を打ち明けられ、...
「僕の中の壊れていない部分」が有名な白石一文の短篇集です。タイトルとなっている「草にすわる」は、ハードな仕事に疲れ、仕事を辞め実家でダラダラと過ごしている青年の話です。閉塞感を感じながらもその生活から抜け出せない青年が何となく付き合っている彼女から同じような閉塞感を打ち明けられ、彼女が持っていた睡眠薬を飲んでしまう・・・。そして覚醒していく物語。 短篇集なので展開が急なところはありますが、この本を読んだ当時、この青年同様に仕事が何年もうまくいかない時期が続いていた自分は勇気づけられました。人生における覚醒がテーマとなっています。
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どうしても死なないではすまないような、 死ぬしかないような切羽詰まった理由でもなければ、 人は生きつづけるしかない 草にすわる 生きるとはなんだろう? 生きることの意味を知るために生きるのではなく、 生きているということがそのものなのだってことかな? だ...
どうしても死なないではすまないような、 死ぬしかないような切羽詰まった理由でもなければ、 人は生きつづけるしかない 草にすわる 生きるとはなんだろう? 生きることの意味を知るために生きるのではなく、 生きているということがそのものなのだってことかな? だけどやっぱり、 必要とされて生きたいし、 生きる意味を知りたいと思う。
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