バッハから広がる世界 の商品レビュー
このタイトルはうまいと思ったなぁ。 小論の集大成といった構成であり、中は大きく三つに分かれ、第一部がバッハ論、第二部が著者が二十世紀のバッハとするシェーンベルク(とバッハ)論、そして第三部が音楽史となっている。 実質バッハを論じているのは第一部だけなのだが、以降の全てがバッ...
このタイトルはうまいと思ったなぁ。 小論の集大成といった構成であり、中は大きく三つに分かれ、第一部がバッハ論、第二部が著者が二十世紀のバッハとするシェーンベルク(とバッハ)論、そして第三部が音楽史となっている。 実質バッハを論じているのは第一部だけなのだが、以降の全てがバッハという巨きな存在から派生する大きな波をとらえた論考として成立しているのだ。 第一部のバッハ論は楽譜の分析なども多く、素人の私には正直わからないところも多かったのだけれど、ひとつ『バロック的空間はまことに音楽的なのである』ということばにはとても魅かれるものがあった。逆に言い換えると、『ある種の空間にはとてもバロック的な響きが感じられる』ということにはならないだろうか。 著者はルネッサンス期以降のバロック様式建築についてこの言葉を用いているのだが、現代建築のすっきりとしたラインにおいても優れたものには常に音楽的な響きを感じ取ることができる、そんな風に思えるのだ。 音楽と数学の関連性はいろいろなところで触れられているが、その「構築美」というものを最も具現化したものが建築なのではないだろうか。 シェーンベルクについては今まで聞かず嫌いだったところがあったのだが、これをよい機会としてちょっと聞いてみたくなった。 また第三章においてもドイツの(ゲルマン風の)カレンダーに基づいたモーツァルトの作品分析など、とても興味深く読めるものがあった。 ちょっと分厚くてしんどかったけど読みがいのある本だと思う。
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