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さよなら妖精 の商品レビュー

3.6

384件のお客様レビュー

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2009/10/04

ユーゴスラビアからやってきた少女=妖精の話。春雨から梅雨へと向かうわずか二ヶ月の青春小説である。 ところで、ユーゴスラビアという国は私にとってサッカーと深く結びついている(W杯直後だからというわけでもないが)今までの人生で、唯一見に行ったことのある日本代表の試合は、対ユーゴスラビ...

ユーゴスラビアからやってきた少女=妖精の話。春雨から梅雨へと向かうわずか二ヶ月の青春小説である。 ところで、ユーゴスラビアという国は私にとってサッカーと深く結びついている(W杯直後だからというわけでもないが)今までの人生で、唯一見に行ったことのある日本代表の試合は、対ユーゴスラビア戦だった。地元、大分で2001年だったと思う。試合は確か稲本のゴールで日本が勝った。そして、この試合はピクシー=ストイコビッチの代表引退試合でもあったのだ。ほぼ、日本代表サポーター。しかし、ユーゴスラビアのサポーターは、日本の地方都市大分にまで確かにやってきていた。拡声器をつかって「ユーゴ、スラビア!!」と応援をしている声を今も覚えている。 しかし、もう二度とスタジアムで「ユーゴ、スラビア!」という応援が聞かれることはない。今年のW杯まで、「ユーゴスラビア」という国が「セルビア・モンテネグロ」へと分裂・改編していたことに私は気づかなかった。そして「セルビア・モンテネグロ」も互いに分離し、次のW杯にこの名前で出場する国はもはや存在しない。日本とW杯で二度戦った「クロアチア」は1991年には、「ユーゴスラビア」だったのだ。 2001年から2006年わずか二つのW杯の期間だけで、現在進行で国は滅び、新たに作り出されてゆく。ソ連崩壊以来はじめてそのことを実感したように思う。ユーゴスラビアは日本から遠い国だ。しかし、サッカーという架け橋を使えば、用意に実感できるところまでやってくる。この小説も、一人の今はもう存在しなくなってしまった「ユーゴスラビア」人であると自覚する一人の少女を架け橋に遠い異国と日本を「日常的な感情」でつなぐ。そして、「国」を創り出そうとするひたむきな営みと、あっさりとそれを砕いてしまう「壁」(それは民族とか人種とかいう単純なものではない)をまざまざと描き出す。 切ないストーリー、しかも所詮 は日本の小説の域をでない。それでも、想像力は容易に遠いものを近くに引き寄せる力のあるものなのだと感じることができた。それ以上に、その力を持つものは「人間」そのものだ。次の日本代表監督オシム氏は、「ユーゴスラビア」人。「ユーゴスラビア」という作られることを願われた国の代表チームを率いた人である。世界は確実につながっているのだ。

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2009/10/04

表紙の写真がハードカバーと文庫版では微妙にずれている。おそらく同じ写真だろうがなぜ変えたのか。その謎を解き明かしたい。

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2009/10/04

妖精ってのはそれだけで非日常で美しく、そして儚い。いたずらっ子でキュートな、そしてもうすぐ遠くへ行ってしまう女の子と、高校生の男の子のボーイミーツガール。米澤穂信得意のティーンエイジの世界観と、謎解きの軽いエッセンスを味わいつつ、最後に解かれる大きな謎と、謎を解くことの切なさ。謎...

妖精ってのはそれだけで非日常で美しく、そして儚い。いたずらっ子でキュートな、そしてもうすぐ遠くへ行ってしまう女の子と、高校生の男の子のボーイミーツガール。米澤穂信得意のティーンエイジの世界観と、謎解きの軽いエッセンスを味わいつつ、最後に解かれる大きな謎と、謎を解くことの切なさ。謎解きを全面に出していない分だけ、切なさが染みた。

Posted byブクログ

2009/10/04

なんとなく、「いま、会いにゆきます」と同じ印象を受けました。読み終えた後、いつまでもせつなさを残す一冊。

Posted byブクログ