男の縁 の商品レビュー
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乙川優三郎「男の縁 自撰短編集 武家篇」、2006.9発行。8話が収録されてますが、未読は第8話「柴の家」だけで、7話は「武家用心集」「闇の華たち」「むこうだんばら亭」で既読でした。既読はさらっと再読。お気に入りは既読の「悪名」「九月の瓜」「梅雨のなごり」です。
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目次 ・悪名 ・男の縁 ・旅の陽射し ・九月の瓜 ・梅雨のなごり ・向椿山 ・磯波 ・柴の家 どの作品も、武士としての生き様を静かに突きつけてくる。 大きな事件に巻き込まれようと、平穏な一生であろうと、少禄の身であろうと。 どれもしみじみ好かったのですが、「旅の陽射し」がことに染みました。 医者の夫に30年以上連れ添った挙句、心臓を病んでから弱気になったり当たり散らす夫を見て、自分たちの結婚生活は一体何だったのかと考える妻。 しかし、共に未来を見るだけが夫婦ではあるまい。 細りゆく未来を感じながら、ともに過去を辿るのもまた、夫婦なのではないのかな。 「磯波」は女性が主人公だけれど、こころ映えは武士のような気がする。 武家の長女として育ちながら、共に心を通わせた男を妹の奸智で奪われ、一生を一人で生きるために実家から離れて女塾を開く。 ひとりで生きることの気楽さと寂しさ。 いつの間にか頑なになっている心に気づくとき。 なるようになるさという観念も、時には必要なのかもしれない。 「柴の家」もまた、女性の生き方の潔さが良い。 養子に入った家で居場所のないまま20年を過ごした男と、作陶のためにすべてをかける女。 男は武士としての勤めをこなすかたわら、女とともに作陶に励む。 互いを乞う気持ちはそこはかとなく感じられるけれど、作陶のために敢えて互いを拒み、馴れ合うことをしない。 土に塗れ煤をかぶりながらろくろを回し窯を焼く二人の姿は、美しいと思えた。
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