カンバセイション・ピース の商品レビュー
保坂の小説論を読んでしまうとそれに影響を受けてしまうが、 それ以前に何度も読み返した小説。頭の中に「家」その周辺の 様子が描き出される。著者やほかの読者とは違うだろうが忘れられない景色になっている。それでまたふと読み返してみる作品。
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題名通り、 様々な空間での「会話」の描き方が巧みだと思います。 風景の描写も素晴らしい。 ベイスターズ好きだけど、野球の応援に行ったことがないので、応援のテンポとか野次とか、感覚がよくわからなかった。だけど、なんとなくジャイアンツファンだった私の亡き父を思い出した。そ...
題名通り、 様々な空間での「会話」の描き方が巧みだと思います。 風景の描写も素晴らしい。 ベイスターズ好きだけど、野球の応援に行ったことがないので、応援のテンポとか野次とか、感覚がよくわからなかった。だけど、なんとなくジャイアンツファンだった私の亡き父を思い出した。それくらい、いい年代の男性像を描けていると思う。 猫をよく観察して、よく表現している。 良い点をいっぱい上げることはできるけど、 私が本を読む上で、大切にしている「余韻」を全く感じることができなかったのが残念。 テンポが決していいわけじゃないし、淡々と話が進んでいくので、なかなか読み進めるのが難しい本でした。 まだまだ、私が未熟なのかもしれないけど・・・。
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日常で、こんな会話ができたらなぁと思う。ガツガツ答えを求めないし、しょーもないことも深く考えるし。何気ない会話から、互いが深まりあっていくんだろうな。猫と古い家が後押し。ベイスターズに関するくだりから、そんな時代かと。
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ごつごつごわごわするような飲み込みにくい文章に最初かなり戸惑った。でも決して嫌いじゃない。日常の見えるもの聞こえるもの、そして今も漂う過去の日常の気配のようなもの、時間・・・。感覚に引っ掛かってくる些細なものたちを掬い上げ眺めて時にこねくり回して。自分にもそう言う傾向があるせいか...
ごつごつごわごわするような飲み込みにくい文章に最初かなり戸惑った。でも決して嫌いじゃない。日常の見えるもの聞こえるもの、そして今も漂う過去の日常の気配のようなもの、時間・・・。感覚に引っ掛かってくる些細なものたちを掬い上げ眺めて時にこねくり回して。自分にもそう言う傾向があるせいか、入り込めたら後は楽しく読めた。 また時を置いて読み返してみたい。
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※このレビューにはネタバレを含みます
数人が集まって会話をしていれば、二つの話題が同時進行したり、突拍子もない方向に話がそれていったり、誰かに自分の言おうとしたことを言われてしまいあわてて口をつぐんだり、そんなことが頻繁に起こる。 登場人物がのんびりとしゃべっているシーンでは、そうしたリアルな会話がいきいきとくり広げられている。そしていつのまにか自分自身も、主人公の住む家―三匹の猫がそれぞれマイペースに駆け回る、築50年の家―の畳に座り、会話に参加しているかのような気持ちになる。 主人公はかつてこの家に大家族がにぎやかに暮らしていたころの記憶や、愛猫チャーちゃんの生と死の記憶に思いを巡らせ、静かに日々は流れていく。 あらゆる事象について自分なりの考えを持ち、深めていくのだが、明確な結論にたどり着かないうちにまた違うものへと思いを巡らせ、さすがにいったいどこへ着地するのだろうと思いながら、終盤に出てきた言葉にがつんと頭を殴られる。 「わからないときにすぐにわかろうとしないで、わからないという場所に我慢して踏ん張って考えつづけなければいけないんだな」 これは、森中という登場人物に向けられた言葉なのだが―彼は今わかる範囲内の知識で物事にすぐに結論をあてがおうとするタイプの人間なのだが―、私は主人公と同じペースで思索を巡らせていたようでいて、いつの間にか森中的な考えに陥り、わからないということをかみしめて踏ん張ることに飽きてしまっていたようだ。 その気づきを得てから、ラストまではあっという間に進んでいった。分かるというところへたどり着けぬことに半ば楽しみを感じながら。 主人公が、庭の草木に水撒きをしながら子どものころの自分がこの庭で考えていたこと、大人になってから知ったこの庭の樹木の名前などについて語るシーンが一番好きだ。ホースから撒かれる水をはじいて揺れる葉の描写がとても美しい。
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※このレビューにはネタバレを含みます
主人公とその妻が死んだ叔父の世田谷の家に住み始めて、そこに会社を間借りする三人と大学に通うため奥の部屋に住む姪、墓参りのため帰ってくる従姉兄たち、ベイスターズを一緒に観戦する野球仲間ふたりを含んだ人たちの日常を小説家である主人公が思い巡らす、やや哲学的な、人間の記憶や感覚の認識とはなんぞや?ということを軸にかなりながながと、しかし小ネタもいれつつなのでそう飽きもせず読める長編小説です。 家や野球場で人がなにかを感じるのは、そこでかつて生活した人の記憶や野球を観戦する人たちの視線、球場、ファン、選手が作り出す“場”などが現前と“在り”、それは風呂場で見た幽霊のような影についても同じようにいえる(かなりネタばれ(^^;)ですが)という結論に達するまでを、短いエピソードを何個も重ねて綴る散文で、とても面白かったです。個人的には野球観戦 のくだりや浩介、森中との哲学論?的な会話がよかった。
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一度は途中で挫折したけど、今回は最後まで読めた。というか、読みながら「終わって欲しくないな、いつまでも続いて欲しいな」と思っていた。保坂和志の文体は大好きだし、事件が起きないだろうという安心感も、最後まで読ませてくれた要因だと思う。 それにしても、ラストの方、病み上がりの主人公と...
一度は途中で挫折したけど、今回は最後まで読めた。というか、読みながら「終わって欲しくないな、いつまでも続いて欲しいな」と思っていた。保坂和志の文体は大好きだし、事件が起きないだろうという安心感も、最後まで読ませてくれた要因だと思う。 それにしても、ラストの方、病み上がりの主人公と、食事を作っていた綾子の会話は見事だった。実際の私たちの会話って、こんな風に噛み合っているようないないような感じで進んでいるんじゃないか、と思った。 それから、森中のキャラは最高だね。 「プレーンソング」と「季節の記憶」も読んだけれど、また読み返してみたくなった。
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おととしぐらいに100ページぐらいまで読んでいたが、中断していたので、最初から読み直して1週間ほどで読み終えた。印象としては、語り手の哲学的とも思えるような言葉が繰り広げられて文が長くなるような部分もあるのだけれど、意外と手が止まることなく、するすると読めていく感じがした。分量と...
おととしぐらいに100ページぐらいまで読んでいたが、中断していたので、最初から読み直して1週間ほどで読み終えた。印象としては、語り手の哲学的とも思えるような言葉が繰り広げられて文が長くなるような部分もあるのだけれど、意外と手が止まることなく、するすると読めていく感じがした。分量と内容からしたらつっかえそうなもんだが、不思議とそれはなかった。 人間の記憶とか日々感じる感覚とかについての考察が巡らされたような小説、という感じがする。小説のところどころに展開される考察ははっとするようなことも多い。ただ、語り手の視点なり考え方が、外界のものによっておびやかされるようなことがあまりない感じはした。カメラで風景をとらえているような感じや、著者の独断的な視点がやや前に押し出されている印象を受ける。 そこらへんをどう思うかによって好みが分かれるところだと思った。 ベイスターズについてえんえんと語られるところは野球ファンとしてはけっこう好きである。
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大切なことをたくさん話してくれて、とても穏やかでいいんだけれど、心の映像のあれこれが綴られているだけだと何だか疲れてしまって、何か一つでも始まらないかなと少し期待しながら読み進んでみたんだけれど、やっぱり何もこれといったことは起こらなかった。
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図書館で偶然この本を見つけた。「間宮兄弟」の兄が読んでいた本であることを思い出し借りてみることにした。冒頭の一文から、この家に集う人々を覗いてみたくて仕方ない。主人公の飼っている三匹の猫にも重要な役割が与えられている。家に染み付いて匂いを通して、猫は過去に生活してきた人々の記憶を...
図書館で偶然この本を見つけた。「間宮兄弟」の兄が読んでいた本であることを思い出し借りてみることにした。冒頭の一文から、この家に集う人々を覗いてみたくて仕方ない。主人公の飼っている三匹の猫にも重要な役割が与えられている。家に染み付いて匂いを通して、猫は過去に生活してきた人々の記憶を辿ることができるといったような新鮮で興味深いものの見方が随所にあり楽しい。が...途中、一頁以上にもなる長文に何度も行く先を阻まれる。一度、二度、三度読んでも"。"がでてくる前に文章の内容が頭の中から抜け落ちてしまう。そうして、だんだんと読むのが苦痛にになってしまう。間宮兄弟は多趣味なだけでなく、相当な知力の持ち主なんだなと改めて感心してしまった。
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