エンゼルうさぎ空をとぶ の商品レビュー
千田ふみ子さんの童話集です。 表題作「エンゼルうさぎ空をとぶ」の他、「さわらびホテルのおきゃくさま」「亜美とめめ子」「ねんねこ山」「ちいさなあかね色のえいがかん」「ちょっとむかしのおおみそか」の6編が収められています。 どの作品も動物と人間の交流を描いています。 うさぎ、たぬき、...
千田ふみ子さんの童話集です。 表題作「エンゼルうさぎ空をとぶ」の他、「さわらびホテルのおきゃくさま」「亜美とめめ子」「ねんねこ山」「ちいさなあかね色のえいがかん」「ちょっとむかしのおおみそか」の6編が収められています。 どの作品も動物と人間の交流を描いています。 うさぎ、たぬき、ねこ、きつね、いたち、が登場します。 ねこは2編に登場します。 作者は動物が好きなようですが、特にねこがお気に入りのようです。 「さわらびホテルのおきゃくさま」では、町を見下ろす高台のホテルにたぬきの親子がやってきます。 「にんげんが、山をどんどんせまくしていくので、わたしたちたぬきのすむところがなくなります。・・・わたしたちたぬきのパワーもどんどんよわくなっているのです」というたぬきのセリフが胸を打ちます。 「亜美とめめ子」では道に迷った亜美をねこのめめ子が人間に化けて道案内をします。 めめ子の子猫を思う気持ちが痛々しいです。 「ねんねこ山」のやまねこは恐ろしい言葉を吐きますが、弱いところも見せたり、最後には主人公が帰れるように頼もしく活躍してくれます。 「ちいさなあかね色のえいがかん」では、疲れたパパと、子供を映画に連れて行くパパとの対比が描かれています。 きつねの映画館の最後の日が描かれています。 駅前大通りは再開発で、映画館のあるビルも取り壊されるという話に哀愁があります。 「エンゼルうさぎ空をとぶ」のうさぎたちは献身的でかわいらしいです。 うさぎが空を飛んで帰っていく様子は幻想的です。 正体はぬいぐるみのうさぎだったというのがおちです。 「ちょっとむかしのおおみそか」では都会に北国から出稼ぎに来ている人たちが描かれています。 「ひとりへり、ふたりへり、さんにんへった山の村」という歌がもの悲しく聞こえます。 子供たちが「お腹が空いたよ」と口をとがらしています。 都会について、あんなに便利なところに住むと、人間も生きる力が衰えるのではないか、と言っています。 心温まるファンタジー集です。 「小学校3年生以上」と帯にありますが、大人も楽しめます。 むしろ大人こそ、子供の心を取り戻すために読むべき童話だと言えましょう。 我が家の高一の娘も読んでいました。 読みやすく、読んだあとで温かくなれる作品ばかりです。
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