歴史のなかの政教分離 の商品レビュー
9・11以降、世界に震撼を与えてきた米国の政策にキリスト教が多大な影響をおよぼしていることは、今や一般社会においても常識となっている。米国のキリスト教の理解を助けてくれる本も少なからず出版されており、キリスト者にとっても大いに助けとなる。しかしそれは、学者たちが今まで積み上げてき...
9・11以降、世界に震撼を与えてきた米国の政策にキリスト教が多大な影響をおよぼしていることは、今や一般社会においても常識となっている。米国のキリスト教の理解を助けてくれる本も少なからず出版されており、キリスト者にとっても大いに助けとなる。しかしそれは、学者たちが今まで積み上げてきた地道な研究成果の恩恵でもあることを忘れてはならない。 本書はそのような学者たち、特にキリスト教と政治との関係を研究している第一線の学者たちによる論文集である。植民地時代から現代にいたるまでの政教分離の問題に焦点を当て、神学者や歴史家や政治学者など、さまざま専門を異にする学者たちによって、多面的な解明が試みられている。 特に、森本あんり氏によるロジャー・ウィリアムズ研究は、今日においても論争の絶えない政治哲学的難問(寛容の限界)の淵源を、政教分離の先駆けたるウィリアムズの直面した問題を踏まえ歴史的に解きほぐしてくれる。また、増井志津代氏による米国キリスト教ファンダメンタリズム研究は、単純に切り捨てることなく保守派の神学思想を十分に踏まえており、彼らとの建設的対話に不可欠である、内在的な理解を得るのに有益である。 政治と宗教の関係に関心を持つあらゆるひとにお勧めしたい1冊。
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