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親指Pの修業時代 新装版(下) の商品レビュー

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17件のお客様レビュー

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「主人公は平凡なのに…

「主人公は平凡なのに、彼(彼女)にまつわる出来事、取り巻く環境が異常である」のが旧い時代の小説の在り方である…という趣旨の文学論を読んだことがあります(その後、「昨今の小説はその逆であるからつまらない」、と批判めいた言葉が続くのですが)。その作品はまさにこれです。取り立てて特徴の...

「主人公は平凡なのに、彼(彼女)にまつわる出来事、取り巻く環境が異常である」のが旧い時代の小説の在り方である…という趣旨の文学論を読んだことがあります(その後、「昨今の小説はその逆であるからつまらない」、と批判めいた言葉が続くのですが)。その作品はまさにこれです。取り立てて特徴のない女性の身に起こった不可思議な出来事にそって物語は進みます。徐々に彼女が「顔の見えない女」ではなくなり、一個の独立した人物として鮮やかに躍動していく過程がとても興味深いのです。でも成長小説ではありません。とにかく、すごく、面白い

文庫OFF

2024/06/11

1994年女流文学賞受賞作。 タイトルはゲーテ『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』が元ネタか。教養小説の形式で性のステレオタイプを網羅しようとした作品で,最終的には予定調和に落ち着くのも分野としては王道だろう。

Posted byブクログ

2024/06/05

「フラワー・ショー」のメンバーたちと行動をともにすることになった一実は、保と映子の共依存的な関係に巻き込まれてしまいます。そして、無垢であるがゆえに簡単に一実のもとを去っていった春志に代わり、映子の存在が一実の心のなかで大きな位置を占めるようになります。 親指ペニスを中心とする...

「フラワー・ショー」のメンバーたちと行動をともにすることになった一実は、保と映子の共依存的な関係に巻き込まれてしまいます。そして、無垢であるがゆえに簡単に一実のもとを去っていった春志に代わり、映子の存在が一実の心のなかで大きな位置を占めるようになります。 親指ペニスを中心とする展開によって奇妙な性の遍歴をたどることになった一実が、映子との同性愛的なかかわりのなかで非性器的なつながりに気づいていくというストーリーなのですが、そのことが精神的な交流という、従来の性愛表現に回収されてしまうという問題は、著者自身が考えている以上に厄介な問題ではないかという気がします。というのは、こうした問題が生じた理由を、著者の小説家としての技量の未熟さに帰することができないからです。 反性器中心主義的な文学を構築するという振る舞いが、性器中心主義的な文学表現をなぞるようなしかたでしかなしえないということは、一方では脱構築の実践として評価することも可能なのかもしれません。しかし個人的には、けっきょくのところわれわれはクローズド・サーキットのなかで走りまわっているにすぎないのではないかという閉塞感をおぼえてしまいます。

Posted byブクログ

2022/05/04

やっぱり最後まで合わなかった…、「だったらなんだ?」感が主人公の行動に常につきまとって、結局彼女やフラワーショーメンバーのやることなすこと全部気に入らず。ただこれは個人の受け取り方次第なので、面白くないというわけでは決してないと思う!どうして本作が90年代最高峰とまで呼ばれるのか...

やっぱり最後まで合わなかった…、「だったらなんだ?」感が主人公の行動に常につきまとって、結局彼女やフラワーショーメンバーのやることなすこと全部気に入らず。ただこれは個人の受け取り方次第なので、面白くないというわけでは決してないと思う!どうして本作が90年代最高峰とまで呼ばれるのか、自分の課題としてもう一度考え直そう。

Posted byブクログ

2018/10/15

男と女の感覚の違いだろうか、表現がとても濃厚で読んでいてだんだんぐったりとしてしまった。こんな話どうやって映画化するのだろうか。

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2015/12/13

 読み終わって、まさにこの物語は「親指Pの修行時代」を描いていたのだなと思った。凝り固まった男性・女性の身体性への先入観や性愛観を無意識のうちに持ってしまっていることに気付かされたけれど、どちらもとても個人的かつ個性的なことなんだから通念に縛られる必要はない。そのようなことを、全...

 読み終わって、まさにこの物語は「親指Pの修行時代」を描いていたのだなと思った。凝り固まった男性・女性の身体性への先入観や性愛観を無意識のうちに持ってしまっていることに気付かされたけれど、どちらもとても個人的かつ個性的なことなんだから通念に縛られる必要はない。そのようなことを、全く押しつけがましくなく示してくれた作品だった。

Posted byブクログ

2014/12/05

江戸川乱歩や筒井康隆を彷彿とさせる内容。 LGBTって言葉が無い頃に書かれた話としては非常に先進的だったんだろうと思います。勿論親指Pという発想事態は現代においても先進的だと思いますが。。。 エピローグの最後の一行が秀逸です。

Posted byブクログ

2014/11/23

エロスのメンターから教わった本。右足の親指がペニスになった女子大生のお話。衝撃的な主題は、なんと小手調べ。親指Pが霞むほどのド変態達による祭典です。超上級者向け。初心者の僕には分からんちんです( ゚σω゚)… 読んでて気持ち悪い本グランプリ優勝作。エロスの道は険しいですね!

Posted byブクログ

2014/05/15
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

親友を亡くした女性の右足の親指がある日突然ペニスになってしまう物語の下巻。 セックス見世物一座の巡業に同行することとなった主人公と恋人である盲目の音楽家。しかし、心身ともに相性がいいと思われた恋人との破局が突然訪れます。途方にくれる彼女に気のいい仲間たちが声をかけてくれ、次第に癒されていきますが…。 同性愛、四角関係、性に何らかの奇形があるために心に傷を抱える人々、そしてクライマックスともなる女性をさげすむ極度の男根主義者の脚本家が主催する劇団…。 主人公は「ふつうの」セックスと思い込んでいたものが、社会や環境に刷り込まれた先入観であったことに気づき、自分の願望をはっきりもつようになります。四角関係に陥っても、「どちらも好き」という態度を崩さない彼女に、優柔不断よりも強い意志が感じられ、とてもたくましく好感がもてました(読んでいてハラハラしましたが(笑))。彼女に釣られるように成長していく周囲の人々も応援したくなります。 あらゆる影響を排除して自分自身に立ち返っていく過程を「修業」と題しているのが興味深いです。とくに現代のような情報化社会では、無意識にいろんな先入観に毒されやすいので、私たちがこの本に共感するところも多いと思います。 自分らしく生きる勇気を与えてくれる感動的な物語でした。

Posted byブクログ

2014/03/19

新恋人 春志と、性的に特殊な事情を持つ人々が集まる見せ物一座「フラワー・ショー」に参加した一実。 だが、一実自身は同性である映子に惹かれていき、、、そして―果して親指Pを待ち受ける運命は・・・!? 性の目覚め、しばらくはPの可能性や快楽を追求するのは親指Pに限らず、、、かもし...

新恋人 春志と、性的に特殊な事情を持つ人々が集まる見せ物一座「フラワー・ショー」に参加した一実。 だが、一実自身は同性である映子に惹かれていき、、、そして―果して親指Pを待ち受ける運命は・・・!? 性の目覚め、しばらくはPの可能性や快楽を追求するのは親指Pに限らず、、、かもしれません。もう、動物か!ってくらいそのことしか考えられないギラついた時期を抜けると、肉欲を切り離したところにある本当の気持ちに気づくとか。 「性の常識を覆し、文学とセクシャリティの関係を変えた」と唱われていますが、下巻はペースダウンというか。 目覚めたら大きな毒虫に変化していたグレゴール・ザムザに比べれば、足の親指の一本程度、靴下や靴でなんなく誤魔化せますが、されど形状はP。一般男性は生まれつきあの奇っ怪な持ち物を所有している。あのようなものが自分についていたならば、、、、持てあますかな。 そもそも何故今頃これを書いているかと言えば、「据え膳食わぬは男の恥」論について考え込んでいるからです。「据え膳食った結果、悪者扱いされた」男性は本当に悪い奴なのかどうか。悪いのはPと、Pの弱みにつけ込もうとする女豹系女子ではないのかね。むむー。

Posted byブクログ