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明治の文学(第12巻) の商品レビュー

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2018/08/28

長編小説「いさなとり」、論文「一国の首都(抄録)」、随筆「折々草」収録。 露伴が20代~30代の頃に書いた作品になりますが、どれも露伴の博識っぷりと今の私が読んでも「いやはやごもっとも」と納得できる価値観が垣間見られて面白かった。以下順番に感想。 いさなとり:24歳の頃新聞に連...

長編小説「いさなとり」、論文「一国の首都(抄録)」、随筆「折々草」収録。 露伴が20代~30代の頃に書いた作品になりますが、どれも露伴の博識っぷりと今の私が読んでも「いやはやごもっとも」と納得できる価値観が垣間見られて面白かった。以下順番に感想。 いさなとり:24歳の頃新聞に連載した作品。正義感が強く、ひょんな事から日本全国あちこち放浪しながら、他人の善意に助けられ悪意に悩まされながらも己の道を切り開いていく主人公を描く。とても筋立てが西鶴などの時代の黄表紙っぽいノリです。 いさなとりの「いさな」とは漢字で書くと「勇魚」。クジラを指す古語。というわけで、作中、捕鯨の描写がありますが、その臨場感と勇壮さはなかなかに読み応えがあってオススメ。 一国の首都:この本では一部省略されていて抄録となっています。露伴の博識っぷりが凄い。タイトルから都市計画について一言もの申す論文かと思いきや、取り扱うのはその範囲にとどまらず、明治維新以降、江戸から東京へと変わっていった「首都」の住人について論じ、仏教の話を引き合いにだしたと思えばキリスト教の話に。西洋を引き合いに公園の立地について論じれば劇場の建築上留意する点、上演する演目内容の風紀を論じていると思うと、吉原や遊郭の害について語る…といった感じで、四方八方に話題が及びます。 一貫して、露伴の潔癖かつ真面目なところや、士族の出身者である誇り、国家を憂いてよりよい国を目指す気概…などが感じられて(しかも、書かれている露伴の価値観は現在でも「その通りですね!」と通じる所が多々ある)面白い。 折々草:なんとなく枕草子など古典の随筆モノっぽい雰囲気で、小さなお題を一つ一つ上げてそれについてサラッと述べていく形式の掌編を集めた随筆集です。ここで、これまで読んできた露伴とは違うお茶目な一面などが見られて(もちろん正義感に強い露伴も存在しますが)、さらに好感度UPという…。DIYに凝ろうと奮闘する露伴や、釣りをのんびり楽しむ露伴。歌を捻る露伴、昔の偉人に思いを馳せたりも。一方では「愉快なこと」というテーマででんでん虫が這っている様子をのんびり眺めること、などと上げていく風流とわびさびですね。(この中に、正岡子規2役+露伴の鼎談ネタの一節が入っているのですが、これは露伴のお茶目な創作って理解で良いのかな…? 正岡子規がめちゃくちゃ美人な女性になってるんだけど…) 編集者が選定したこの3作品、それぞれ露伴の魅力を表現してて良いですね。

Posted byブクログ