1,800円以上の注文で送料無料

流浪 の商品レビュー

0

1件のお客様レビュー

  1. 5つ

    0

  2. 4つ

    0

  3. 3つ

    0

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2013/11/28

<「流浪」と「反骨」をあわせて> からだの「あな」(鼻や尻や耳などの)をふだん、「穴」と意識したことはほとんどなかったように思う。鼻に指を突っ込んで、その腹に血が付いて慌てるようなことがあっても、呼吸したり、音を鳴らしたり、排泄したりする「穴」と生きていく上での密接な自分とのつ...

<「流浪」と「反骨」をあわせて> からだの「あな」(鼻や尻や耳などの)をふだん、「穴」と意識したことはほとんどなかったように思う。鼻に指を突っ込んで、その腹に血が付いて慌てるようなことがあっても、呼吸したり、音を鳴らしたり、排泄したりする「穴」と生きていく上での密接な自分とのつながりを、私は今まであまり考えたことがなかった。 だから、金子光晴が『流浪』のなかで、「人間には穴がある」と書いているとき、そうだった、俺にも「穴」があったんだと思いおよぶ。彼はさまざまな「穴」にうごめく一つのすがたに、せつせつとした眼差しをむける。 「穴」には、愛らしい獣としての人間の臭みが満ち満ちている。彼は他人の「穴」に指を突っ込んで「同じように臭い」とつぶやいたり、脱糞した当のものを直に手で撫でてみたり、その生みの親と同じように、「穴」が孕んだ落とし子を彼はこよなく愛でる。その「穴」に、人間の哀切と愉悦の運命をともに見ながら、「穴」の住人であるすがたを語っていく内容はとても強烈だ。                          「反骨」へつづく。

Posted byブクログ