わが国金融風土の解明 の商品レビュー
かつて北海道拓殖銀行や日本長期信用銀行などが破たんしたことがあったが、それを「平成金融恐慌」と呼ぶらしい。 信用保証のために公的資金を投入し、また「投入しなければ」と世論は諦め顔であった。 「堅実」をうりものにし、その代表的存在でもある銀行が多数破たんしたのか。破たんする銀行...
かつて北海道拓殖銀行や日本長期信用銀行などが破たんしたことがあったが、それを「平成金融恐慌」と呼ぶらしい。 信用保証のために公的資金を投入し、また「投入しなければ」と世論は諦め顔であった。 「堅実」をうりものにし、その代表的存在でもある銀行が多数破たんしたのか。破たんする銀行になぜ公的資金を投入したのか。それが抜本的な解決策になったのか。 「金融恐慌」「護送船団方式」「財政・金融分離」。いろいろなキーワードが飛び交ったけれども、著者はその必然と課題解決の手順を「金融風土解明」という手法で明らかにしようとされる。 金融・財政という経済学の「数字と理論」の世界に「風土」という広域な概念で迫ろうとするのは、なぜか。その要因が制度的要因と非制度的要因による説明が必要との問題意識を反映している。 初心者にもわかりやすいのは、本書が修士課程のテキストとして用意されたものであることを母胎にしているからかもしれない。 しかし、問題点の凝視はするどく、考察も構造的で、目配りも深い。 本邦における金融政策の中枢に身を置かれた方ならではの構想と提案。後進から、「よくぞ先輩」の評か、「先輩、そこまでは」の評価。関心のある点である。
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