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天ハ自ラ助クルモノヲ助ク の商品レビュー

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2009/10/07

明治の初期のベストセラーといえば、福沢諭吉の『学問のすすめ』を思い浮かべる人が多いだろうが、それと並んで爆発的に読まれた本が中村正直訳『西国立志編』である。しかし、『立志編』は翻訳ということからか、これまでその影響がほとんど問題にされてこなかった。本書は、比較文学の泰斗である平川...

明治の初期のベストセラーといえば、福沢諭吉の『学問のすすめ』を思い浮かべる人が多いだろうが、それと並んで爆発的に読まれた本が中村正直訳『西国立志編』である。しかし、『立志編』は翻訳ということからか、これまでその影響がほとんど問題にされてこなかった。本書は、比較文学の泰斗である平川祐弘氏が、探偵さながらに、スマイルズの原著セルフヘルプのみならず『西国立志編』のアジア世界への影響を追いかけたものである。影響がどのようにあらわれているか。今まで常識と思われた話、伝承がいかに後世のつくりごとであったか、学問をする人間は、一つ一つの事実を改めて疑う必要がある。また、自ら願って留学生たちのお目付役になり、イギリス社会に驚嘆したものの、それをゆっくりと咀嚼し、後半生ではむしろその負の側面にも目をやった中村正直の姿勢にも当時一流の儒学者の生き様を感じた。

Posted byブクログ