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ローマ人の物語(25) の商品レビュー

3.9

31件のお客様レビュー

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2013/01/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

トライアヌスを継いだハドリアヌスの治世の前半を書いている。ヒスパニア属州出身ながら、若いころからトライアヌスとアティアヌスを代父としてもち、軍団でも好調なスタートを切り、なるべくして皇帝になった人である。パルティア戦の途中でトライアヌスが没すると、軍団の支持を得て皇帝となり、反ハドリアヌス勢力の中心であった4人を殺害(アティアヌスの独断だったとの説もあるが塩野氏は否定)以外は大きな戦争も弾圧もしなかった皇帝である。首都で大盤振る舞いをした後は、パルティアから巧妙に撤退し、ライン河防衛線、ヒスパニア、アテネ、北アフリカなどを視察、インフラのメンテナンスと軍団組織の改革に着手した。ローマ法集成の基礎も築き、のちのユスティニアヌスの「ローマ法大全」に基礎を与えた。建築では現在ものこるパンテオンを球形の建築に改修している。ユルスナル「ハドリアヌス帝の回想」にもふれ、修正を試みている点は面白い。ハドリアヌスは年上の女性に気に入られる男だったようである。トライアヌス帝の后が支持に回ったのも大きかった。

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2012/05/08

●内容 ・「ローマ5賢帝」の3人目、ハドリアヌス帝の評伝。先代のトライアヌスに抜擢され、一貴族から皇帝になった前半生を描く。 ●コメント ハドリアヌスの描写を通じて語られる、著者のリーダー観に得るものが多い。個人の美徳とリーダーの美徳との違い。指導者の徳について。 (引用) ...

●内容 ・「ローマ5賢帝」の3人目、ハドリアヌス帝の評伝。先代のトライアヌスに抜擢され、一貴族から皇帝になった前半生を描く。 ●コメント ハドリアヌスの描写を通じて語られる、著者のリーダー観に得るものが多い。個人の美徳とリーダーの美徳との違い。指導者の徳について。 (引用) ・君主ないしリーダーのモラルと、個人のモラルは違うのである。一私人ならば、誠実、正直、実直、清廉は、立派に徳で有り得る。だが、公人となると、しかも公人のうちでも最高責任者となると、これらの徳を守りきれるとは限らない。ラテン語では同じく「ヴィルトゥス」(virtus)だが、私人ならば「徳」と訳せても、公人となると「器量」と訳したのでは十分でない場合が少なくなく、しばしば「力量」と訳さざるを得なくなるのである。 ・献身とは辞書によれば、自身の身命を差し出すこと、自分を犠牲に供すること、となるが、死んで生きること、でもあると私は思っている。そして、そのようなことまでしてくれる人を持ったということ自体が、指導者の「徳(ヴィルトゥス)」であると思うのだ。

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2017/08/16

腐女子ならローマ史を知らなくても、この名を知らぬ者はいない と思っているハドリアヌス帝の登場である。実際、腐女子でも 知らぬ人は多いんだけど。笑。 10歳で父を亡くしたハドリアヌスの後見人になったのは、後に 皇帝となったトライアヌス(先帝)とアティアヌス(後の近衛軍 団...

腐女子ならローマ史を知らなくても、この名を知らぬ者はいない と思っているハドリアヌス帝の登場である。実際、腐女子でも 知らぬ人は多いんだけど。笑。 10歳で父を亡くしたハドリアヌスの後見人になったのは、後に 皇帝となったトライアヌス(先帝)とアティアヌス(後の近衛軍 団長官)。 基礎教育を受けさせようと首都ローマに呼び寄せれば、エリート 階級には不可欠だったギリシア語を学ぶのは勿論なのだが ギリシア文化全般に傾倒して行く。 ローマの男ならば質実剛健でなければならぬ。ふたりの後見人 にとっては、ギリシア文化=軟弱なのだ。「このままではネロに なってしまうっ!」と思ったかどうかは知らぬが、14歳になった ハドリアヌスは故郷へ送り返される。 これで安心と思いきや。今度は狩に熱中して、やはり後見人 ふたりを心配させる。極端から極端に走ってるなぁ。 このハドリアヌスの皇帝就任には疑惑が残っている。先帝 トライアヌスが死の床で後継指名をしたのだが、それは本当に 皇帝自身が口にしたことなのか。著者の指摘を読むと、怪しさ いっぱいの指名なんだよなぁ。 さて、笑い話。ある日、皇帝となったハドリアヌスは公衆浴場へ 足を向ける。そこで目にしたのは以前、自分の下で百人隊長を 務めた老人が、石鹸だらけの体を浴場の壁に擦り付けていた 姿だった。 話を聞くと、垢すりを雇う金がないとのこと。皇帝は以前の部下に 費用付きで垢すり専用の奴隷をふたりも贈った。 次の日、皇帝が再び浴場に出向くと背中を擦り付ける老人たちで、 壁が埋まっていた。 時代や国が変わろうと、人間のこういうところって変わらないんだなぁと、 妙に納得しながら笑ってしまった。

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2011/04/04

11/4/4 5賢帝3人目、ハドリアヌス帝。パルティアからの撤退、トライアヌス帝の重臣の粛清、ローマ全土への旅行、ローマ法大全。パルティアからの撤退を決断したのはさすが。ユルスナルの文章が素晴らしすぎる。是非、『ハドリアヌス帝の回想』を読んでみたい。

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2010/12/19

ハドリアヌス。皇帝として初めて髭をたくわえ、ギリシャにひかれる。治世の間、ローマにあまりいない。ジッとしているのは性に合わない。働き盛りの年頃、アンティーノという11月27日生まれということしか今ではわかっていない美しい少年に出会い寵愛する。 おそらく美を愛する皇帝でもあった。 ...

ハドリアヌス。皇帝として初めて髭をたくわえ、ギリシャにひかれる。治世の間、ローマにあまりいない。ジッとしているのは性に合わない。働き盛りの年頃、アンティーノという11月27日生まれということしか今ではわかっていない美しい少年に出会い寵愛する。 おそらく美を愛する皇帝でもあった。 20101218

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2010/05/31

5/31:トライアヌスの起こした戦線を収集させ、平和(パクス)を重視した治世を行った。領内(現フランス、ドイツ、モロッコ)を精力的に視察し(視察、っても今の政治家のような旅行気分のものではない)把握、改善をおこなった結果、望んだ平和が得られたんですな。このころのイタリア人は非常に...

5/31:トライアヌスの起こした戦線を収集させ、平和(パクス)を重視した治世を行った。領内(現フランス、ドイツ、モロッコ)を精力的に視察し(視察、っても今の政治家のような旅行気分のものではない)把握、改善をおこなった結果、望んだ平和が得られたんですな。このころのイタリア人は非常に柔軟で真面目な人種だったんだね。解放奴隷上がりでも、ローマ法典をまとめた一人にもなっているしね。能力がある人にはどんどん仕事と地位がつけられたのでしょうね。公正をモットーとしたハドリアヌスの時代だからこそかもしれませんが。 ---------------------------- 5/27:トライアヌスの次の皇帝ハドリアヌス。2代続いてかっちょいい名前だわ。

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2010/01/02

非常に面白かった。 至高の皇帝の次の皇帝という大業を任されたハドリアヌスを、筆者は「一生を通して官能的な男だった」と評しているが、まったくうまい表現があったものだと思う。 皇帝となって早々、主権者たる元老院の有力者を粛清し逆風にさらされる皇帝。その後、人気の回復に努め、全幅の信頼...

非常に面白かった。 至高の皇帝の次の皇帝という大業を任されたハドリアヌスを、筆者は「一生を通して官能的な男だった」と評しているが、まったくうまい表現があったものだと思う。 皇帝となって早々、主権者たる元老院の有力者を粛清し逆風にさらされる皇帝。その後、人気の回復に努め、全幅の信頼を置かれたと判断すれば、即座に広大なローマ帝国視察の大旅行に旅立つ。 旅行といっても物見遊山のそれではなく、防衛線で安全保障に努め、辺境でインフラの整備をし…と皇帝に求められる任務を次々にこなしながらの旅である。 行動型の皇帝ということでカエサルを髣髴とさせる皇帝だと思った。 そういえばカエサルこそ官能的な皇帝(独裁官)の代表格だろうしな。彼は言葉どおりの意味でセクシーだったようだし(笑)

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2009/10/04

至高の皇帝トライヤヌスの治世を引き継いだのは、彼が幼少期から後見人を務めていたハドリアヌスである。ローマの勃興から滅亡までを描いた本シリーズを読み進めていれば、読者はいずれわびしき衰退期に差し掛からざるを得ないが、トライヤヌスがハドリアヌスという賢帝を後継者に指名してくれたおかげ...

至高の皇帝トライヤヌスの治世を引き継いだのは、彼が幼少期から後見人を務めていたハドリアヌスである。ローマの勃興から滅亡までを描いた本シリーズを読み進めていれば、読者はいずれわびしき衰退期に差し掛からざるを得ないが、トライヤヌスがハドリアヌスという賢帝を後継者に指名してくれたおかげで、今しばらく絶頂期のローマを眺めることができる。ハドリアヌスはトライヤヌスに比べれば、多少複雑な人物だったそうである。ギリシア趣味をたしなむあたりはネロを彷彿とさせるが、それでいてティベリウスのような誠実さも持ち合わせており、しかもアウグストゥスのような腹芸もこなしたそうである。ともすれば完全無欠のまじめ一徹といった風情のトライヤヌスよりも、ネロとティベリウスが同居したかのようなハドリアヌスの方が、断じてエピソードは豊富であろう。もしタキトゥスのような人物が五賢帝時代のことを描いていればなぁという思いは禁じえない。

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2009/10/04

至高の皇帝であるトライアヌス帝の後を継いだ、 ハドリアヌス帝の物語。 トライアヌスの親族として皇帝についたハドリアヌスの、少年時代から皇帝になってからの業績が綴られている。 特筆すべきは、ハドリアヌスの帝国巡行。 治世の3分の2を費やしてまで行った、帝国の安全保障の再構...

至高の皇帝であるトライアヌス帝の後を継いだ、 ハドリアヌス帝の物語。 トライアヌスの親族として皇帝についたハドリアヌスの、少年時代から皇帝になってからの業績が綴られている。 特筆すべきは、ハドリアヌスの帝国巡行。 治世の3分の2を費やしてまで行った、帝国の安全保障の再構築。 リストラストラクチャの業績はとてつもなく大きい。 また、本国に皇帝がいなくとも政治が成り立つ内閣を作り上げた手腕は特筆に価する。

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2009/10/04

在位中のほとんどを帝国史上最大になった領土視察に費やしたハドリアヌス。首都でのクーデーター等の憂いがなかったのかな。スケールの大きな賢帝。

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