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2025/02/02

ニューヨークで女性、移民、警官であることのハードさ。複雑に絡み合うインターセクショナリティ、不寛容で悪意を向けてくる社会と政治、ときにはその街も。そのなかでもタフでいようとする彼女の、正義よりも矜持を保つための解決しない物語。彼女もまたクイーンである。 ニューヨークの音楽やアー...

ニューヨークで女性、移民、警官であることのハードさ。複雑に絡み合うインターセクショナリティ、不寛容で悪意を向けてくる社会と政治、ときにはその街も。そのなかでもタフでいようとする彼女の、正義よりも矜持を保つための解決しない物語。彼女もまたクイーンである。 ニューヨークの音楽やアート・シーン、カルチャーの描写は楽しいけれど、同時にその街で移民の女性警官として生きることはハード過ぎる。それでも挫けないタフさは素晴らしいけれど、それは作家の、あるいはわたしも持っているある種の理想でもあって。そこまでは強くなれない“彼女”たちがいることも想像しながら読んだのだった。 ここで書かれるタフさはたしかに力強く感じるのだけれど、それを全ての女性が持っているわけではないし、求めることも出来ないと思う。解決するべき世界や社会の問題を解決するよりも、彼女たちにタフであるべきだ、と求めることはあるべき姿ではないとも思う。そんなことを考えていると、ああ、これは男性が書いた小説なのだな、とも思うのだった。 1997年にリリースされたそんなニューヨークが舞台の小説は、その舞台が何年かは言及されていないけれど96,7年位と想像しながら読んでいた。主人公が訪れる“パンク・ロック・クラブ”、その時代(それが80年代だったらAgnostic FrontやAntidoteが登場したかもしれない)の〈A7〉で演奏している“アート“寄りぽいポストパンクはわたしにはしっくりこないーけれど、「スラムダンスには確かな解放感がある。」という主人公の感慨には納得出来るー気がするのだけれど、その週末別の会場ではわたしの好きなメタリックなハードコア・バンドも演奏していたかもしれない。そんな想像をしながらALL OUT WARの2ndアルバムを聴いている。1stが97年でこれは98年のリリースだから、想定している小説の舞台ではまだリリースされていないのだけれど、わたしはこのアルバムが好きなのだ。そんな適当さも受け入れながら聴き始めた音楽は読書のサウンドトラックにもなるし、その小説を読んでいた人生の数日間のサウンドトラックとしても記憶に残る、ような気もする。 ジャスミン・ウォードの「骨を引き上げろ」のエピグラフにはOutcastのDa Art of Storytellin' (Pt. 1)のAndre 3000のバースが引かれていて。それをきっかけにはじめて聴いた彼らの3rdアルバムはその曲も含めてとてもカッコかった。小説にも本と過ごした数日間にもしっくりくる気もしていた。今「骨を引き上げろ」は手元にないのだけれど、このアルバムを聴き出せば読み返すことの出来ない小説のことも読書中の興奮も、その間の人生も思い出すことが出来る、ような気がしてくる。少なくともそこにあったはずの喜びは蘇る。だから、というかそれだけが理由ではないけれど、わたしは小説の中で流れる、あるいは流れていて欲しい音楽が聴きたいし読書中にも音楽を流しているのだった。 読み終わってみると、実はもう少し昔、84年くらいを回想しているぽい気がしてきた、というのも含めて後に思い出すのだと思う。

Posted byブクログ