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2010/10/10

 山本周五郎の『失蝶記(『日々平安』所収)』から生まれたこの台本は、かけがえのない友をその手で斬り殺した青年の回想から始まる。何故、そんなことになったのか、彼はその経緯を手紙に記し続ける。    演劇集団キャラメルボックスが初めて上演した悲劇、『TRUTH』の台本。台本とい...

 山本周五郎の『失蝶記(『日々平安』所収)』から生まれたこの台本は、かけがえのない友をその手で斬り殺した青年の回想から始まる。何故、そんなことになったのか、彼はその経緯を手紙に記し続ける。    演劇集団キャラメルボックスが初めて上演した悲劇、『TRUTH』の台本。台本という制約があるので、会話と動きが主なのですが、悲劇と銘打ちながら、笑いを忘れない展開には脱帽です。登場人物それぞれがどんな一瞬も動き、その動きに理由があり、そこに人としての深みがあるのは、演劇の台本ならではかもしれません。劇を観たことがある人は、文字を通して役者さんの動きを観ることすら出来るのではないでしょうか。  読み終えた後の余韻やそれぞれの視点を念頭に読み返すときの驚きを含め、何度読んでも読み足りない作品だと思います。特に、『失蝶記』には存在しない「問いかけへの答え」には息をのみました。  私は元々、図書館に存在したビデオでこの台本に魅了されたのですが、何度観ても英之助の一言が胸に響きます。思い浮かぶ帆平の視線は厳しくも温かいし、月真和尚には一喝されてみたいような気がしてしますし。ふじさんの漬けたぬか漬けも頂いてみたいし、鏡吾さんのことを嫌いだとは思えません。よく、これほどの笑いを散りばめた悲劇を描ききったものだと思います。

Posted byブクログ