あのときわたしが着ていた服 の商品レビュー

河野万里子(訳者),アイリーンベッカーマン

2024/05/20

ガールスカウトの制服に始まり、母の手製服、勝負デートのコーデ、親友と色違いのコート、ウェディングドレスと夫の浮気を目撃した夜のドレス、2番目の夫との離婚直後にローンで買った毛皮などなど、執筆当時50歳の著者がお洒落なイラストと簡潔な文章で1940〜90年代を描きだす、「わたしが着ていた服」ヒストリー。

ジョルジュ・ペレックが『さまざまな空間』に「今まで眠りについた場所を全部おぼえてるから、その記憶を綴った『ぼくが眠ったことのある場所』という本をだしたい」と書いてたけど、本書はまさにそのファッション版。
しかもベッカーマンは生まれも育ちもマンハッタンのシティガールで絵も上手い。イラストも文章も書きすぎないで余白をたっぷり残してあるのがお洒落でムカつくぜ〜〜と思いながらも、お母さんのセンスきらめく手製服をたくさん描き残したのはそういうことなのかと気づくころにはすっかり取り込まれている。
自分だけではなく身近な人たちの絵も可愛い。へにょへにょに描かれたおばあちゃんの表情に愛を感じる(笑)。デザイナーの母を持つ親友、奇抜で独自のスタイルを持つもう一人の親友、三人でチーズのホットサンドとチェリーコークを飲み食いしながらマニキュアを選んだドラッグストア。訳者あとがきで「ユーミンの曲みたい」と表現されてたけどその通り。そして男は描かない。
子どもを産んでからはガクッと数が減るのは切ないけれど、その代わり節目節目の大事な選択の日に身に纏っていた服の物語が語られる。ファッションは自分を表現するものであると同時に、服で表した虚勢に中身を詰めていくことでもあるということ。いつでも〈理想の自分〉が心のなかにいるのは格好良いということ。服が好きな人たちの生き様はそれを教えてくれる。

2018/12/11

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2018/01/10

古本屋で題名に魅かれて手に取った本。絶版らしいです。
著者が今まで着てきた洋服のディテールだったり、その服にまつわる思い出だったりを味わい深いイラストと短い文で説明しています。

洋服を着ることで、物語ができる。
洋服を着ることで、心を豊かにすることができる。
着るだけで幸せにもなれる。
思い出とともにいつもそばにあるのは、自分が身に着けているものです。
それを忘れないでいさせてくれる本。