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一九世紀ドイツ憲法理論の研究 の商品レビュー

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2014/05/16

表題の通り、19世紀のドイツ憲法学を包括的に論じる論文集。著者の見立てでは、19世紀ドイツ憲法学は三つの潮流に分かれる。まず30年代までが自然法論期であり、これは18世紀後半に成立した「後期自然法論」(D. クリッペル)の流れをくむものである。その後、60年代まで、有機体論が主流...

表題の通り、19世紀のドイツ憲法学を包括的に論じる論文集。著者の見立てでは、19世紀ドイツ憲法学は三つの潮流に分かれる。まず30年代までが自然法論期であり、これは18世紀後半に成立した「後期自然法論」(D. クリッペル)の流れをくむものである。その後、60年代まで、有機体論が主流となる。有機体論がむしろ民主主義的傾向を含む憲法理論であったという点を、ベッケンフェルデの論述に依拠しながら、個々の論者について詳細に論じている。そして最後に、ゲルバーとラーバントによって代表される実証主義的憲法理論が登場する。著者はこのタイプの議論が、プロイセン憲法紛争以降の君主勢力と市民階級の妥協として成立した「立憲君主政」国家を正当化する機能を果たしたと想定している。とはいえ、このタイプの議論には行政の法律適合性の要求など、法治国家原理を学問的に要請するという側面もあったことを正当に指摘している。19世紀の憲法学全般をこのように明快に整理し、かつ、個別の論者について詳細に議論しており、また、それ以前の18世紀の憲法学やイェリネックの一般国家学などについても綿密な解説がなされており、包括的な研究となっている。

Posted byブクログ