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オウム事件取材全行動 の商品レビュー

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2012/06/21

 毎日新聞社会部の記者が、オウム真理教の取材の舞台裏を綴ったもの。硬派なタイトルとは裏腹に愉快なエピソードも含まれ、まるでストーリー仕立てになった編集後記のよう。  希代の事件を前に、吹雪の山中で震えながら取材をしたり、号外作りに慌てふためいたり、予期せぬ展開や情報に振り回される...

 毎日新聞社会部の記者が、オウム真理教の取材の舞台裏を綴ったもの。硬派なタイトルとは裏腹に愉快なエピソードも含まれ、まるでストーリー仕立てになった編集後記のよう。  希代の事件を前に、吹雪の山中で震えながら取材をしたり、号外作りに慌てふためいたり、予期せぬ展開や情報に振り回されるも、どこか楽しそう。  泣いたり、笑ったり、ライターズハイのような状態で駆け抜ける記者たちのイキイキとした様子や、大事件の取材に携わることができる喜びが、とてもよく伝わってくる。  現在はフリーで活躍している、著名なジャーナリストの社員記者時代の描写も興味深い。  ただ、本書は決して記者の行動を美化しているわけではない。  熾烈を極めたメディアスクラムへの自省や、河野さんの誤報にも触れているが、ページ数はわずか。河野さんの「マスコミは、事件の報道も謝罪も横並びなんですね」という言葉がズシリと重くのしかかる。  元サンデー毎日編集長の牧太郎さんの署名原稿「1989年秋 そして今 狂信と闘ったペンの記録」は、宗教や報道について考えるきっかけとなった。  手放しで名著と称えることはできないが、発売から17年経った今でも読む価値は十分にある。

Posted byブクログ